「予算」という言葉を使用する意図
ところで、「予算」「計画」「目標」と、短期の数値計画という意味では一般的に同じような意味で使われるこれらの単語の中で、本記事では主として「予算」という表現を用います。
それは、「秒速決算」で集計される実績値(ないし実績を踏まえた予測値)と対比するうえでは、予算という表現が一番なじむためです(予実管理、予算実績差異分析など)。
私自身この領域の専門学者ではありませんし、ことさら単語の定義にこだわりがあるわけではありません(むしろニュアンスさえ伝わればどうでもよいくらいです)。色々な表現が用いられるなかであえて「予算」という単語が多くなるのは、そのような理由からという点をご理解いただければと思います。
予算の存在自体が会社の予算達成を楽にする
予算とは、スタート地点で教えてもらうゴールであり、そしてそのゴールへの道しるべのようなものです。
たとえば、オリエンテーリングか何かで、制限時間内にけもの道を進んでゴールにたどり着かなければならない場合を想像してみてください。予算がある状態というのは、まさに、スタート時点でGPS対応のスマホが渡され、ゴール地点と現在地がスマホ上で点滅しているような状態です。
途中で通過するべきポイントも示されています。実際に道を歩いたら木が倒れていてコースをふさいでいるかもしれませんし、坂道がとても急かもしれません。雨が降ってきて道がグチャグチャになってしまうかもしれません。
しかし時間内にゴールしなければならない状況下、何とかして進まなければならないことは変わりません。そんなときに、ゴールやそこに至る道しるべを示したもの(GPS対応のスマホ)があったらどれだけ楽でしょうか。
向かうべきゴールの場所や途中の道しるべをスタート地点からわかっているほうが、効率的にゴールにたどり着けるのはいうまでもありません。
予算は会社にとって単年度ごとのゴールであり、そのゴールへの道しるべそのものです。一般的に予算とは、1年間の利益計画を具体化したものです。
そして予算には同時に、四半期や月次などにブレークダウンした細予算(注3)がセットになります。細予算は、年度予算を達成するための道しるべです。
ゴールはいきなり達成できませんので、順を追ってゴールに向かっていくことが現実的です(細予算は達成できなくても、最終的に年度予算を達成すればよいのでゴールではなく道しるべという扱いです)。
このように予算はゴールを示すとともに、その達成の道しるべとして機能しますので、予算の存在自体が予算達成のために役に立つのです。
(注3)細予算:「細予算」という用語は一般的なものではありません。一般的に予算は年間予算を指すことから、本書では、それより細かい単位である四半期や月次の予算を総称して「細予算」と定義づけしてみました。なお、四半期や月次の予算はそれぞれ四半期予算、月次予算と呼ばれることが多いでしょう。
川崎 晴一郎
公認会計士・税理士
KMS経営会計事務所・株式会社KMS代表