(画像はイメージです/PIXTA)

迷惑行為をした人物等に対し、フォロワーや過去の投稿内容、画像の映り込み等をたどり、その人物の本名や住所、勤務先や学校などの個人情報を特定する「特定班」とよばれる人々がいます。実際に特定された側にとっては、個人情報がデジタルタトゥーとして残ってしまう可能性もあり、とても許しがたい行為といえるでしょう。それが間違いであったら尚更です。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、実際のトラブルと無関係の人物の個人情報を流出させてしまったときのリスクについて永岡孝裕弁護士に解説していただきました。

事件と無関係の人物を犯人として投稿してしまい…

相談者はTwitter上で、とある少年事件の犯人として特定の人物を取り上げ、投稿してしまいました。しかし実際には相談者が勘違いをしていただけで、その人物は事件とは全く関係なかったのです。

 

相談者は勘違いだとわかってからすぐに投稿を削除しましたが、後日その人物の家族から相談者のもとに発信者情報開示請求と回答書が送られてきました。

 

そこで相談者は、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。

 

  1. この場合、必ず回答書に回答しなければいけないのか
  2. 意見照会書に「同意」と回答すれば、相手から民事訴訟などを起こされて、慰謝料等を請求されるのか

無視すると住所氏名が開示される可能性が高くなる

結論として、回答書は、絶対に回答に応じたほうが良いです。安易に「同意」する旨の回答を行うことは危険ですが、「不同意」にして争う場合には、回答することにより有利になることはあれど、不利になることはないからです。

 

万が一、回答書(意見照会書)を無視した場合、プロバイダは投稿者に特に意見(反論)はないものとみなします。この場合、極稀にですが、14日間の期間内に回答書が返送されない場合には開示に同意したものとして投稿者の住所氏名等を一方的に請求者に開示してしまうケースも小さなプロバイダの中には見られます。

 

もっとも、基本的には、プロバイダ側も投稿者の個人情報を安易に開示してしまうと、投稿者から損害賠償請求を受けうる立場に置かれていますので、大手プロバイダ(NTT、ソフトバンク、ソニー、KDDI等)では、意見照会書の返答がなくとも任意開示は行わない運用となっているのが現状です。

 

ただし、その場合でも、意見照会書が届いたということは請求者側も既に弁護士に依頼しているのが通常ですから、任意開示が得られなかった請求者は、プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を起こして開示を求めてくるのがその後の一般的な流れになります。

 

そして、発信者情報開示請求訴訟において裁判所が発信者情報の開示を行うべきか否かを判断するのですが、その際に裁判官は意見照会書の内容も十分に吟味した上で開示か否かの判断を行います。

 

したがって、回答書においては、ご自身の投稿した内容が請求者の権利を侵害する違法な投稿に当たらないとの主張を、法的に組み立てて反論する必要があります(すなわち、単に「不同意」に丸をつけて、ろくな理由も書かずに回答するのは得策ではありません)。

 

なかには、言いがかり的な開示請求も見られますが、回答書でしっかりと反論することで、請求者がその後の訴訟提起を断念したり、開示請求訴訟を行っても請求棄却判決(非開示との判断)となるケースもあります。

 

もっとも、投稿内容によっては、誰の目から見ても権利侵害が明らかであり、違法性阻却事由も到底認められないケースもあります。このような場合には、いくら意見照会書でしっかりと反論しても、いずれ住所氏名等が開示されるのは時間の問題であり、請求者側の弁護士から投稿者に対して民事裁判を起こされてしまうことになります。

 

このような場合には、意見照会書が届いた段階で弁護士に依頼し、相手方に示談交渉を申し入れることで、相手方がその後の開示請求訴訟に要する弁護士費用が掛からずに済むため、不同意にして先延ばしにして争うよりも結果的に少ない示談金額で済むことも多いです。

 

次に、2つ目の質問に対する回答ですが、「同意」として回答書をプロバイダに提出した場合には、投稿者の住所氏名等がすぐにプロバイダから相手方に開示されます。

 

その場合でも、いきなり民事訴訟を起こされることは通常はあまりなく、まずは相手方代理人弁護士から連絡や通知書が送付されてきて、慰謝料等の請求が来るのが一般的です。

 

そして、投稿者と相手方代理人との示談交渉において金額面や条件面で折り合いがつかず、話し合いでの解決が難しいと相手方代理人が判断した場合に初めて、民事訴訟を起こされることになります。

次ページ真実の証明が難しい場合、賠償責任を負う可能性が高い

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