(画像はイメージです/PIXTA)

迷惑行為をした人物等に対し、フォロワーや過去の投稿内容、画像の映り込み等をたどり、その人物の本名や住所、勤務先や学校などの個人情報を特定する「特定班」とよばれる人々がいます。実際に特定された側にとっては、個人情報がデジタルタトゥーとして残ってしまう可能性もあり、とても許しがたい行為といえるでしょう。それが間違いであったら尚更です。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、実際のトラブルと無関係の人物の個人情報を流出させてしまったときのリスクについて永岡孝裕弁護士に解説していただきました。

真実の証明が難しい場合、賠償責任を負う可能性が高い

相談者はTwitter上で、とある少年事件の犯人として特定の人物を取り上げ、全く無関係の人物を犯人だと投稿してしまったとのことです。このような場合、無関係の人物の氏名や住所、顔写真等、個人を特定できる情報を記した上で、「この人があの事件の犯人だ!」と断定する投稿をしてしまったのであれば、名誉毀損が成立し、損害賠償責任を負う可能性が非常に高いです。

 

名誉毀損の違法性阻却事由として、事実を摘示して名誉毀損がされた場合には、「その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,右行為には違法性がなく,仮に右事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される。」という最高裁の判例があります。

 

本件においては、仮に、「特定班」と呼ばれる人々の誤った内容の投稿を見て安易にその人が犯人だと信じ込んでしまい投稿を行った場合や、何らの根拠なく思い込みで投稿をしてしまった場合には、「重要な部分について真実であることの証明」も「事実を真実と信ずるについて相当の理由」があったことの証明も難しいので、損害賠償責任を負う可能性が高いと考えられます。

 

ネット上の情報は、根拠のないデマがいかにも真実らしく投稿されている場合も多いです。それを安易に信じて犯人と決めつける投稿を自らも行ったり、あるいは他人の社会的評価を低下させるツイートをリツイートしただけでも、場合によっては名誉毀損に当たる場合があるという判例も近年出ています。

 

実際に、東名高速で夫妻が死亡したあおり運転事件をめぐり、ネット上の掲示板に、犯人とは無関係の会社のホームページを投稿し、犯人の勤務先会社である旨の投稿を行った人物が、刑事事件として罰金30万円の刑に処されて最高裁で確定した事件もあります。

 

ネット上の投稿内容は誤情報である可能性も高いですから、安易に信じないように注意し、きちんとした裏取りをしないままにそれを投稿・拡散することによって刑事上・民事上の責任を自らが負いかねないリスクがあることに注意して、ご自身が投稿する前に「確かな根拠はあるのか」を確認し、投稿することによって自身が加害者になってしまう可能性があることを、投稿前に一度立ち止まって冷静に考えるようにして頂きたいと思います。

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