党の監視が行き届く人民元決済ネットワーク
現代の金融市場、資本市場はそういう大きな資産が主です。だから、我々の懐にあるようなちっぽけなお金が外へ流れたからといって、これはどうってことありません。
例えば100人民元をたまたま持ってしまったとします。日本国内で使うところはないから、親しい中国人がいたりしたら、「こんなの持っててもしょうがないからあげるよ」となりがちです。小さなお金だとその程度の話で、人民元の流出はしなくて済んでしまうわけです。しかし巨額の人民元の資本取引が海外で行われることは避けたいはずです。変動相場制になるということは、すなわち国外でもそういう取引が自由に行われるということになります。
仮に、いつの間にかおびただしい規模の人民元資金が海外で蓄積したとしましょう。すると東京やニューヨーク、ロンドンで人民元の自由な変動相場制の市場ができて、人民元の資産を取引できるということになります。すると人民元は、本国では党が基準レートを決める管理相場なのに、海外は自由変動相場制という二重相場になります。
すると、お金は自由な市場に向かいますから、中国本土から香港経由など裏ルートで巨額の資本逃避が起きる。こうして人民元を党が管理する制度は崩壊し、西側のようなフリーフロート(変動相場)制に移行せざるをえなくなる。習政権はそれを恐れているのです。
■変動相場制の意味と中国が嫌がる理由
例えば日本に関しては、外国の投資家が日本の不動産も国債も自由に買えます。これらの資産は現金と違ってそれら自体が収益を生むので資本とみなされます。それもすべて国内でも海外で取引可能です。
仮に日本が円に固定相場制を導入して「1ドル=100円」に設定しても、海外の外国為替市場はそれとは無関係に自由な変動相場市場で円が取引されます。まとまった単位の円建て資産を担保にした巨額の円資金が海外の市場で自由に売り買いされ、ニューヨーク、ロンドンなど海外市場で円相場は大きく変動します。
したがって、本国の固定相場制は維持できなくなります。資本取引の自由化と為替取引の自由化は切ってもきれないものなのです。
中国は明確にそれを嫌がっています。貿易でも結構な額のお金が動くわけですから、国外の貿易拠点には中国銀行や中国工商銀行などがさっさと支店を出します。そして人民元が必要ない人には「私どもが人民元の預金口座を設けます。その代わり引き出す際はあなたの国の通貨でお願いします」と、人民元をすべて回収してしまうルートをつくるのです。
こうして人民元の金融システムは、党の監視が行き届く人民元決済ネットワークのなかで完結させるというわけです。
田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員
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