中国企業との取引トラブルの事例
「中国法が基準でなければ契約できない」と主張していた中国企業
■経緯・背景
中国からの輸入品を販売しているBさんは、取引をしている中国のX社との間に契約書を作成していないことが気がかりでした。
BさんはX社に対し、商品の買い付けはもちろん、商品タグの取り付けや商品の管理、顧客への発送など、Bさんのビジネスの根幹を担う業務を依頼していました。
しかし、依頼した業務の実施態様が杜撰(ずさん)であることなどにより、顧客からのクレームに発展することもありました。
「このままではいつか取り返しがつかなくなるかもしれない」と考えたBさんは、依頼業務の内容、補償、賠償請求などを含めた契約をX社と書面で交わしたいと考え、弁護士事務所に相談に行きました。
■解決までの流れ
X社には日本での業務を委託している会社があり、Bさんが直接やり取りしていたのはその日本の会社です。
しかし、X社自体は中国資本の企業であるため、問題が起こった際には日本と中国、どちらの国の法律を基準に考えるのか(準拠法)、どちらの国の裁判所で紛争解決をするのか(国際裁判管轄)が曖昧な状態でした。
さっそくX社に連絡を入れると、契約書の作成については快諾を得られたものの、やはり準拠法と国際裁判管轄が問題となります。X社は「うちは中国の企業なので、中国法に基づいて、中国の裁判所で」と譲りません。
しかし、それでは日本でビジネスを行うBさんにとってリスクとなります。
そこで弁護士は、日本法を準拠法とし、日本の裁判所を管轄にするためにはどう交渉すればよいか考えました。Bさんにとって、煩雑かつ大量の業務を安価で引き受けてくれるX社は命綱です。他方、X社にとっても、大量の発注をしてくれるBさんは特に大切な顧客でした。
そこで、「日本法を準拠法とし、日本の裁判所を管轄とする契約でなければ、今後は取引ができない」と交渉していきました。並行して、同様の取引で日本法を準拠法とし、日本の裁判所を管轄としたケースはないか、専門書籍や判例・裁判例をリサーチしました。
その結果、中国資本の企業でも、日本法を準拠法とし、日本の裁判所を管轄とすることは可能であり、また、日本の会社を巻き込むことで、そのような手法がより説得的になるとの結論に至りました。
そして最終的に、日本の会社に連帯保証をしてもらう形で、Bさんが望んだ通りの契約内容とすることができました。
■結果・解決ポイント
相手方との交渉の際には、互いの立場を見極めることが大切です。
BさんのビジネスにとってX社は欠かせない存在であったわけですが、実はX社は、「Bさんは業務面においてX社にかなりの依存をしている」ということまでは知りませんでした。また、X社にとって、Bさんからの売上は無視できない金額でした。
この関係性を見極めることで、X社に対し、「もしかしたら他社に乗り換えられるかもしれない」と思わせるような強気の交渉が可能となりました。
また、徹底的にリサーチを行ったことも強気の交渉を可能にした一因です。グローバル化が進む昨今、海外企業とのやり取りは増加しています。トラブルが発生しても泣き寝入りせずに済むよう、事前に契約書を締結しておくことの重要性はますます高まっているのです。
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