ジャクソンホール会議を来週に控え市場は一進一退。中国当局は経済悪化と物価高を両にらみに難しい局面に立たされる

ジャクソンホール会議を来週に控え市場は一進一退。中国当局は経済悪化と物価高を両にらみに難しい局面に立たされる
(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 19,773.03 pt (+0.05%)
中国本土株指数6,719.88 pt (+0.29%)
レッドチップ指数 3,653.44 pt (+1.03%)
売買代金821億7百万HK$(前日893億4万HK$)

来週予定されるパウエルFRB議長の発言に注目

昨日の米国市場は主要3指数が前日終値で一進一退の動きとなるも小幅に反発。主要通貨に対するドル指数は1ヵ月ぶりの高値を付けた。複数のFRB当局者がインフレ抑制に向け利上げを継続する必要があるとの見解を示し、金融引き締めに対する懸念を燻るも下値は底堅かった。

 

目先の注目は来週25日から開催されるジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言である。パウエル議長は、米東部時間26日午前10時から経済見通しについて話す予定で、インフレ抑制のためにタカ派の姿勢を維持すると予想されている。

 

9月のFOMCまでには、8月の雇用統計もインフレ統計も参考にできるだけに、26日にあえて踏み込んだ内容に言及するとは想定しないが、発言には注目しておくべきである。

 

年内にはあと3回のFOMCが予定されている。その3回で、1.25%幅の利上げが実施されることを市場は織り込んでいる。しかし、2023年前半に利上げは打ち止めとなり、年後半では、利下げに転換することすら市場は予想している。

 

FRBは利上げペースについて従来からデータ次第と言及しており、パウエル氏がその発言に対して助長を促すような発言が飛び出すと株式市場にも影響が及ぶだろう。

中国市場は電力不足により資源株が堅調。電力株も好調

19日のアジア市場は引き続き上値が重く、米国株市場同様に前日終値で一進一退の動きとなった。

 

ハンセン指数は朝方に切り返す場面も、指数は大引けにかけて再び下げ相場となり前日比0.05%高で引けた。前日終値は10日以来、1週間ぶりの安値圏だったこともあり、下値で拾う動きもみられた。

 

中国で電力不足が伝えられることを材料に資源株が堅調だった。石炭採掘の中国中煤能源(1898)は4.9%高、兗礦能源(1171)は3.8%高、中国神華能源(1088)は2.8%高と上昇した。

 

そのほか電力株も好調となり電力大手の中国電力(2380)は6.1%高、風力発電の龍源電力(0916)は2.8%高となった。

 

個別では昼に決算発表を行った海運大手の東方海外(0316)が大幅高となり6.5%高。同社の上半期の純利益は前年比で2倍(101.5%増)となったほか特別配当を支払い、一株当たりの配当金(DPS)が前年比36%上昇したことが好感された。

 

一方、決算を受けてオンラインゲームのネットイース(9999)が6.3%安、前日高かったバイオ医薬品の薬明生物技術(2269)が4.8%下落した。

 

中国本土市場は上海総合指数が前日比0.59%安の3,258.08、CSI300指数は同0.69%安の4,151.07で引けた。朝方、プラス圏に浮上する場面もみられたが、目新しい材料が見当たらず、大引けにかけては下げ幅を拡大して今週の取引を終えた。

 

来週22日は中国の銀行の最優遇貸出金利であるローンプライムレート(LPR)の発表を控える。市場の見通しでは15日の1年物中期貸出制度(MLF)の金利引き下げに続いて、引き下げ期待が高まっている。

 

ただ、7月の中国消費者物価指数が2.7%上昇と2020年7月以来2年ぶりの高水準だったことは気がかりである。

 

物価が上昇する中で、積極的な金融緩和姿勢は中央銀行としては取りづらい。大胆な金融緩和を行っても景気刺激策につながるとも限らない。中国当局は悪化する経済と物価高を両にらみに難しいかじ取りを迫られている。

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