なぜ廊下の手すりは2段構造なのか
■ホームのショーウインドー化とは何でしょうか?
老人ホームのショーウインドー化について、少しだけ触れておくことにします。
例を挙げます。あるスーパーに行くと、次のような光景が目に飛び込んできます。A社の牛乳1パック100円。ただし、当店には、A社以外の牛乳の取り扱いはありません。という但し書きがあります。
つまり、100円という価格は、圧倒的に安いということがわかります。そして、安くできる理由は、A社以外の牛乳を取り扱っていないからだ、ということがわかります。安い理由を正直に説明し、それを理解している消費者だけが購入しているという仕組みです。
したがって、他社の牛乳にこだわっている人はこの店では購入しない、ということなのだと思います。
老人ホームも同じです。なぜ、廊下は狭いのか? なぜ、廊下の手すりは2段構造になっているのか? なぜ、この場所に職員管理室があるのか? なぜ、この場所に物入れがあるのかなどなど。多くのホームでは、内装や構造について、かなりの工夫をしています。中には、設計の段階でかなりの時間をかけて工夫を凝こらすケースもあります。
しかし、残念なことは、そのことを外部に対し発信しないため、その苦労が報われることはありません。ひどいホームは、そこで仕事をしている介護職員でさえ、知らなかったというケースがあります。
廊下はなぜ狭いのか? 老人ホームの中には、無駄に広い廊下を持つホームも少なくありません。見た目は、広々として気持ちが良いのですが、私は狭いほうが良いと考えています。理由は、転倒防止になるからです。広い部屋だとつかまるところがないため転倒しやすくなりますが、狭い部屋だと、何かしらにつかまることができるので、転倒防止につながります。
また、廊下に設置されている手すりは、多くの老人ホームの場合、2段構造になっています。理由は、上の段は歩く人のため、下の段は、車いすで自走する人のためです。このようなケースは、説明をしないとわかりません。
前出のスーパーのように、張り紙やポップで説明書きをしておくと「なるほど」ということになり、見学に来た人にもわかりやすく、さらに、こんな工夫をしているのか? ということが理解でき、当該ホームの介護方針が伝わってきます。
介護とは、哲学とか思想とかに近く、方針とか考え方が重要になってくるものです。それを、私は流儀流派と言っているのです。
したがって、しっかりと、自ホームの介護方針が入居希望者に伝わるということが重要であり、この介護方針が自分にとって、あるいは、自分の親にとって、合っているかどうかが重要になっていくということなのです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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