(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者は、若いときより睡眠時間が短くても大丈夫です。個人差はありますが、4、5時間で十分睡眠が足りる方もいます。何も8時間眠る必要はないのです。でも、なぜか私たちは眠れないことを苦にします。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

以前の自分と比べて「できなくなる」不安

一か月後、その男性が来院したときに、彼は「もう睡眠導入剤に頼るのはやめようかと思います」と言います。

 

夜中に深夜ラジオを聞くと、世の中に眠れない人の多いことがわかった。ラジオではいろいろな人の話が聞ける。それに耳を澄ましていると寝ちゃうんです。せっかくいい話だったのに、続きが聞きたい。そのことを友達に話したら、スマホに変えるようにすすめられ、スマホにしました。友達も子どもから教えられたそうです。

 

聞き逃しサービスやいつでも前の放送が聞けるアプリがあるんですよ。眠れないときはラジオを聞き、ウォーキング中も好きな番組を聞いたりして公園をグルグル散歩します。いままで、歩くのはつまらなかったけど、歩くのも好きになりました。

 

……そんな報告でした。この男性は不眠以外にも不安が多かった方です。「病気になる」「認知症になったらどうしよう」「車の運転をしていいのか」など悩んでいましたが、検査結果から見て「大丈夫」と伝えても納得されませんでした。このようになんの根拠もない不安を抱える方は多いのです。

 

その原因は、前の自分と比べてしまうことにあります。「できなくなった、できなくなった」と考えていると、不安はつきまといます。

 

いま楽しめることを探してみる。いまの自分を認める。不安に思うようなことは実際にはなかなか起こらないものです。だから不安に思っている時間はもったいないものです。不安からうつ症状へいくのも怖いことです。

 

いまの70代は若いです。それは昔の70代より若々しくなったということです。しかし、60代、50代の自分と比べることはやめましょう。

 

「以前は、富士山なんて休まず登ったもんだ」と漏らした人もいます。「いつのことですか?」と聞くと、「20代の終わり頃」と言います。いくらなんでも20代の自分と比べてはダメでしょう。思い出は大事にとっておいて、いまの自分にふさわしい生活を考えていきましょう。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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