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小泉構造改革が進んだように見えた理由
■経済成長とグローバリズム
いまや経済はグローバルで展開していますから余計にそうなのですが、一国だけが成長するというわけにはいきません。グローバルな意味で新しい市場が出来て、そこにどんどん投資が行われていくことで果実を得て、皆の生活が豊かになっていくという流れになっています。これがグローバリズムの肯定される大きな理由です。
国内の需要だけではなかなか経済成長できませんが、内需は非常に重要です。直接国民生活に関係してくるからです。それは日本もアメリカもヨーロッパも当然理解していますが、国外、とくに対外貿易抜きにして内需拡大はあり得ないのも事実です。
なぜかというと、輸出が増えればそれだけ国内の設備投資が出てくるからです。設備投資が起きると新しい雇用も当然生まれるわけで、その波及効果によって、今度は国内市場が発展して、新しい需要が喚起され、さらに発展していきます。こういう循環がグローバルに開放された世界での経済成長、発展のカタチなのです。
■小泉構造改革とアメリカの思惑
2001年から始まった小泉純一郎政権が掲げた新自由主義的な政治方針が「小泉構造改革」です。小泉さんは、1990年代以降の景気低迷が官僚機構の肥大化と民間への過剰な規制にあるとし、それらの解消を目指しました。そして郵政民営化、道路関係四公団の民営化、地方財政を見直す三位一体改革などを推進しました。
一方、2003年に始まったイラク戦争で小泉さんは海上自衛隊掃海部隊のペルシャ湾派遣など、軍事的な側面でアメリカ中心の有志連合に協力して、ブッシュ大統領(子)は高く評価しました。そのときブッシュ政権には、日本にはイラク戦争の軍事的協力と同時に、小泉構造改革を成功させないといけないという思惑がありました。
小泉改革を成功させれば、郵政の民営化が実現します。そうすれば日本の莫大な「かんぽ」や「ゆうちょ」のお金をアメリカが吸い上げて、アメリカの金融資本が潤っていきます。
全米商工会議所の当時の対日要求のリストにも「小泉改革の成功」と出ていましたから、アメリカのビジネス界にとって利益になることは明白です。しかし、小泉改革が日本経済をよくするはずはありませんでした。
マクロ経済的に、郵政民営化が景気回復には繫がらないのですから。このことは政府もある意味でわかっていたのかもしれません。というのも、円安に誘導していましたから。結局、日本の輸出競争力を強化するしかなかったのです。
円安に持っていくために、日本の財務省が介入しました。円売りでドル買い介入するということは、ドルが絡みますから、当然アメリカ政府の了解が必要ですが、普通は反対します。議会が反発する円安誘導、為替の誘導ですから。
しかしこのとき例外的にブッシュは容認しました。財務省の溝口善兵衛財務官(のちに島根県知事)とアメリカのジョン・テイラー財務次官がシリコンバレーで対談して、アメリカが黙認することにしたのです。その目的は小泉改革を成功させることとジャパン・ハンドラーたちの主張に応えるためです。
ジャパン・ハンドラーといえば、リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、ジョセフ・ナイ、カート・キャンベルなどが挙げられますが、小泉内閣が成立したとき、私はホワイトハウスに呼ばれて、マイケル・グリーンと会って話をしました。彼がとくに強調していたのが中国の台頭でした。
日本はこのまま沈んじゃダメだ、中国に対抗するためにも日本は強くなければならない。だから小泉改革を成功させ、日本の経済を小泉の手で良くしたいと……それでアメリカに利益が回ってくる。
小泉政権のときの経済成長に結びついたのは「小泉構造改革の成功」ではなく、溝口さんとテイラーさんの“密約”による円安誘導ということになります。
2001年はアメリカ経済が比較的良くありませんでした。ITバブルが崩壊し、9.11同時多発テロの影響があったためです。これが2003年、2004年と上向いていって、マーケットが大きくなりはじめて、ひいては住宅バブルになっていきました。「低所得者だって家が持てる、いいだろう」と消費ブームになる。すると日本の輸出も増える。
しかも円は高くならないから、もう安心と、日本の景気は上向きました。そのうえ小泉さんが賢かったのは、そのとき消費税の増税をやらなかったことです。動物的感覚が優れていたというべきか、「俺は絶対やらない」と。これが景気回復の相乗効果を生みました。