中国の暴走を止めるためにロシアのように日米欧は金融制裁ができるでしょうか。世界の金融市場に占める中国のシェアが非常に大きいのです。もし中国の大手銀行に対して、香港ドルとアメリカドルの交換を全面的に禁じると、国際金融市場が大パニックになります。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

グローバル金融の仕組みそのものが中国を利する

■お金に倫理はない

 

先日中国のことをいろいろ調べていたら、もう中国はモノだけでなく、金融でも借り手として世界の中心になっています。

 

2020年末、中国はとくに国際金融市場でのプレゼンスが大きくなっていて、国際金融市場での債務証券発行の中国の占めるシェアが36%でした。とくにリーマン・ショック後の伸びが急激で、国際決済銀行(BIS)の統計によると、2020年末には2008年比で約1兆2000億ドルの増加でした。

 

アメリカの約1兆1000億ドルを抜いています。全世界の増加額は約8兆1000億ドルですが、中国がアメリカより高いシェアで国際金融市場を引っ張ってきたということになります。

 

世界中でお金が余っています。そのお金を中国が一手に引き寄せているということです。この現象、即ち外貨がどんどん中国に流れていることが、ドルに依存する中国の経済を支えています。

 

例えば先進国はいまゼロ金利ですから、中国は低コストの資金をどんどん調達できていて、対外的な、例えば一帯一路などの拡大が可能になっています。金利を上乗せして途上国に貸し付け、返済が厳しくなったらその国の重要インフラの支配を強めるという、あこぎなことを同時にやってしまうわけです。

 

もうひとつはIPO(新規公開株)のための外貨調達がすごく膨れ上がっています。このように所謂国際金融で中国はいまやりたい放題です。

 

そのやりたい放題を止めたいという気運はありますが、現実にはなかなか難しい。お金というものは絶えず動かさないといけません。じっとタンス預金をしていても意味がありませんし、銀行に預けても、銀行はそのまま口座に置いておくわけにもいきませんから、運用しないといけません。投資家も絶えずより高いリターンが見込めるところに投資するわけです。

 

金融機関や投資家は世界中で余っている低コストのお金を吸い上げて、高いリターンが望める中国に投資します。中国の債券や株にです。世界がそうなってしまっているのです。もう中国は世界の工場であるだけではありません。世界の金融の集積地になっています。

 

「借金」と言うと聞こえが悪いですが、既述のようにそもそも資本主義は借金によって成り立っているのです。そういう意味で中国はある種、世界の金融を支配するぐらいの影響力を持ってしまっています。

 

もともと中国は外貨準備がたくさんないと人民元の信用を得られないから、外貨が欲しいわけです。ただ世界から流れてくるお金は莫大なので、一部を外貨準備に振って、残りは対外投資に回しています。それで利ザヤを稼いでいるのです。

 

残念ながらグローバル金融の仕組みそのものが中国を利することになっています。ただ、これはいまに始まった話ではなく、例えばヒトラーが台頭したときのドイツに盛んに金融支援したのがウォール街だったり、イギリス中央銀行のイングランド銀行だったりしたのです。

 

ヒトラーのところにお金が行って、彼の利益になるとわかっていても……投資家はそういうものなのです。お金はそういうふうに動く、要するにお金には倫理はないのです。だから世界を壊すことにもなります。ヒトラーの例が典型でしょう。

 

次ページ中国の暴走を抑える金融面からの封じ込め

本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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