相続財産の分割は感情・経済の両面を考慮する
一家の大黒柱が亡くなった場合には、相続財産が残された家族の生活資金になります。被相続人(亡くなった人)と一緒に住んでいた相続人がいるときは、その自宅に引き続き居住したい人もいますので、遺産分割協議をする際は、各相続人の感情面と経済面の両面に考慮しながら話し合うことがポイントです。
まずはそれぞれの法定相続分を確認する
民法では法定相続分が定められており、配偶者とその他の相続人の関係で相続割合が異なります。
まずはこの法定相続分をそれぞれが確認することにより、遺産分割協議の目安とすることが可能になります。
これはあくまで遺産分割協議時の目安であるため、必ずしも法定相続分通りに相続財産を分ける必要はありません。相続人間で納得できる形であれば、法定相続分とは異なる割合で相続財産を取得することも可能です。
たとえば被相続人の相続財産を配偶者がすべて取得し、将来配偶者が亡くなった際に子ども達だけで改めて相続財産を分けるのも選択肢ですし、各々が欲しい種類の相続財産を主張して相続することもできます。
しかし一方で、法定相続分よりも多くの財産を取得する相続人がいるということは、法定相続分より少なくなる相続人がいるということになりますので、不満を持つ相続人がいないとも限りません。実際、相続人には法定相続分に応じた財産を取得する権利を主張することが認められています。
特に自宅以外の相続財産がほとんどないような場合には争いが起こりがちです。その際、自宅を引き継ぎたい相続人がいる場合には、代償分割(特定の相続人が現物財産を取得する代わりに、他の相続人に対し代償金を支払う分割方法)により遺産分割を行うことも選択肢となります。
そういったときにも各自が法定相続分を把握しておくことで、話し合いがスムーズに進むと考えられます。
なお、現在では被相続人の配偶者であれば「配偶者居住権」を相続することができるようになっており、配偶者にとっては被相続人の自宅に住み続けることがより容易になっています。その点も考慮に入れるとよいでしょう。
家督・家業の継承も考慮する
戦前の日本は家督相続制度があり、基本的に相続財産は家業を継ぐ人(主に長男)がすべて取得していました。 現在の民法では家督相続は廃止されていますので、被相続人の子は生まれた順番に関わらず、平等に相続権を主張できます。
しかし、法律上では廃止になったとはいえ、子のうちの1人(主に長子)が家業や家を継ぐ風習が現在でも残っている家庭は多いといえます。家督や家業を承継する相続人は、親族の取りまとめなどの負担を引き受けることになりますので、法定相続分以上に相続財産を取得したい気持ちがあるかもしれません。
そのため家業を承継しない相続人は、承継する人に相続財産を多く渡したり、希望する相続財産が取得できるよう配慮することも、円満な相続には必要です。
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