「円満相続」のためには生前からの準備が必要
被相続人の財産を最も把握しているのは、被相続人自身です。 したがって被相続人が生前に相続財産を整理し、相続人同士で財産を分けやすい環境を整えることも、スムーズに相続を完了させるためには必要になります。
被相続人の財産を目録などの一覧にしてまとめる
相続財産を分ける際、最初に抱える問題が、被相続人の全財産を把握する作業です。被相続人が転勤や引越しを経験していれば、以前住んでいた周辺の銀行に口座を持っている可能性があります。
また現在は、インターネットバンクやネット証券もありますので、書類ベースで被相続人の財産を把握するのが難しくなってきています。
そして特に相続財産の把握漏れが多いのが、被相続人自身が先代から引き継いだ不動産などの財産です。被相続人の実家の土地や、先代から名義変更した銀行口座が手つかずの状態で放置されていることもあり、これらの財産を相続人だけで把握するのは大変です。
遺産分割協議が完了したあとに新たな相続財産を見つけた場合には、その財産の分割協議を再度行わなければなりません。
そのため被相続人は自身が保有する財産を目録などにまとめ、相続が発生したあと、相続人が相続財産の状況を把握できるようにしておくと、遺産分割協議を始めやすくなります。
生前から相続人に対して相続財産を明らかにする
被相続人と一緒に生活していた相続人であれば、被相続人の財産状況をある程度把握していますが、別居している相続人は被相続人がどのような財産を所有しているのか把握していません。
相続財産の話し合いの際、被相続人と同居していた親族から提示した相続財産が想像よりも少なかった場合に、別居の相続人が「他にもっと財産があったはず」と苦言を呈するケースが多くあります。
生前に同居していた相続人が相続財産を使いこんだと思い、他の相続人がその分相続財産を多く要求するケースも実際に存在します。
これらの問題点は、相続人ごとで把握している相続財産の情報に差があることが原因の1つです。各相続人がそれぞれ同程度、相続財産について知っていれば、相続財産の分け方で揉める可能性は低くなります。
生前から亡くなったときの話を聞くのはあまり快く思わない人もいるかもしれませんが、被相続人が元気なときから情報を共有したほうが、遺産分割がスムーズに進められます。 そのため被相続人が生前に自らが保有する財産について、相続人全員に話すことも、円満相続のための手段です。
遺言書で被相続人の意思を明確にするのも選択肢
相続人同士の財産争いをなくすために、遺言書を残すケースは近年増えています。 遺言書は、被相続人の意思を示すもので、遺言の内容が認められれば、原則としてその内容に基づき相続人は相続財産を取得します。
遺言書で一般的なのが、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。
公正証書遺言は、立会人の下で遺言書を作成するため、家庭裁判所の検認が不要なのが特徴です。
一方自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けないと有効な遺言として認められず、日付・署名・押印など、遺言書を成立させるための必須事項が多いです。ただ自筆証書遺言は、被相続人1人で作成できるのが最大の特徴であり、作成時の費用もほとんどかかりません。
なお、有効な遺言書がある場合でも、相続人全員が同意すれば、遺言書の内容に基づかない遺産分割協議書の作成も可能です。
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