そもそも「争族」とは
争族とは、遺産相続をめぐって争う親族のこと、あるいは遺産相続をめぐる親族どうしの争いそのものを指した言葉です。相続と同じ読み方の漢字を当てはめた造語であり、公式には使われない俗語として定着しています。
遺産相続をめぐる争いは資産家だけのもので、一般家庭では起こらないと考えられていますが、実際は異なります。争族は一般家庭でも十分起こりうるもので、少ない遺産をめぐって争う方が深刻になる傾向があります。
相続が「争族」になりやすいケース
これから、遺産相続から親族の争いが起こりやすいケース、つまり相続が「争族」になりやすいケースをご紹介します。これらの場合で必ずトラブルが起こるわけではなく、当てはまらなければ争族にならないというわけでもありません。あくまでもよくある例としてご覧ください。
①自宅以外にこれといった財産がない
相続財産が自宅だけで他にこれといった財産がない場合は、相続が「争族」になりやすい傾向があります。財産が多い家庭では生前から相続対策をすることが多いですが、財産がそれほどない家庭では対策をしないまま相続を迎えることが大半です。
財産のほとんどが自宅であれば争いは深刻になります。現金であれば相続人どうしで分け合うことが容易ですが、自宅を分け合うことはできないからです。
故人に配偶者がいれば、ひとまず配偶者が自宅を相続することで落ち着きます。しかし、次に配偶者が死亡したときに1つの自宅をめぐって兄弟で争うことになりかねません。
②特定の相続人だけ故人を介護していた
特定の相続人だけが故人を介護していたなど、相続人の負担が公平でなかった場合も争族になりやすい傾向があります。介護や看病、事業の手伝いなど故人に対する貢献は、金額に換算したうえで「寄与分」として相続分を上乗せすることが認められています。
しかし、特定の相続人に寄与分を認めると、他の相続人は自分の相続分が減ることになってしまいます。そのため、争いが起こりやすくなります。
さらに、介護や看病などの行為は客観的に金額に換算することが難しく、寄与した相続人とそうでない相続人の考えの違いから話し合いはなかなかまとまりません。
③特定の相続人だけ生前贈与を受けていた
特定の相続人だけが特別に財産をもらい受けていたなど、故人からの恩恵が公平でなかった場合も争族になりやすい傾向があります。たとえば、ある相続人だけ自宅購入の援助を受けた場合や、海外留学の費用を出してもらった場合などがあてはまります。
これらの贈与を「特別受益」といい、遺産を前もってもらったとみなして、相続分からマイナスすることになっています。特別受益があった相続人は相続分が少なくなるため、争いが起こりやすくなります。
さらに、生前の贈与が特別受益にあたるかどうかは明確な線引きがあるわけではなく、解釈をめぐって深刻なトラブルになりがちです。
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