南北戦争の決着後に起こった「劇的な社会発展」
イギリスの産業革命を引き継いでアメリカで進んだイノベーションも、制度の重要性を端的に示すものでした。
アメリカでも1865年の南北戦争の決着後、一気に生産性の向上と社会変革が進みます。それがその後の情報通信革命を凌ぐ一回きりの大きな社会変革をもたらすものだったと分析するのは、『アメリカ経済 成長の終焉/上・下』(高遠裕子・山岡由美訳 日経BP社)の著者、アメリカの経済学者ロバート・J・ゴードンです。
アメリカ初の大陸横断鉄道は1869年に開通します。それに続いて自動車の普及と道路の整備が進みます。他方、アレクサンダー・グラハム・ベルが1876年に電話機を発明すると、わずか2年後の1878年には全米で約150社の電話会社が設立され、営業活動を始めます。
1879年にはトーマス・エジソンが白熱電球を完成させ、3年後には「パール・ストリート・ステーション」という大規模な中央発電所をニューヨークに開設して本格的な「電気の時代」を開きます。そして1892年には競合メーカーであったトムソン・ヒューストン・カンパニーと合併してゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)を設立し、白熱電球の普及に大きく前進しました。その後もさまざまな電化製品の開発が急速に進み、ミシン、扇風機、掃除機、録音機、冷蔵庫、ラジオ、テレビなどが1930年までの50年間ほどの間に続々と登場、爆発的に普及していきます。いずれも人々の労働や日々の生活を劇的に、そして不可逆的に変えるイノベーションでした。