治療途中で「やっぱりこうしてほしい」要望
■ゴールを見誤らないために
忘れないでいただきたいのは、理想的な矯正をするためには、ドクターの力だけでは難しいということです。もちろん、ある程度プロの言うことを聞いたほうがよいと思いますが、患者さんもゴールに向かって努力をしたほうがよいということです。
日本人は控えめな人が多いので、最初は、「きれいに並べばいいです」など、ゴールに対してあいまいに表現してしまう人がほとんどです。しかし「きれいに」といっても、具体的にどういう状態が「きれいに」なのかは、感覚的なもので人それぞれです。明確にしておかないと、ドクターの思っていることとの間に齟齬が生まれてしまいます。
治療が進んで仕上げに近づいてくると、「やっぱりこうしてほしい」などと希望を伝えてくる人もいますが、矯正医の立場からすると、その段階ではどうにもできないことが多いのです。ですから最初に細かく設定をするべきだと私は思っています。治療が進んでしまうと、できることは限られてしまうのです。
とはいえ、何を重視して矯正治療をするのか、どうなりたいのか、そのイメージが患者さんには湧いていないのかもしれませんね。
そのため私は、「こんな感じの口元にしたい」と、モデルさんや芸能人、あるいは友だちの写真を持参してもらうようお願いしています。ただし、美容整形するわけではないので、やはりできることに限界があるとは思っていてください。
■矯正治療は医師任せでは進まない
理想の矯正を実現するためには、「ドクターと患者さんが共有できる目標を設定すること」とお伝えしましたが、ほかにもあります。
それは、舌のトレーニングです。
医療は何でもそうですが、やはり「患者さん本人が治す」というスタンスが非常に重要です。
当院でも、「親に矯正しろと言われたから来ました」というように、やる気のない子はいます。そうすると予約している日時に来なかったり、家でやってきてほしいことを一切やってこなかったりします。そうすると、やはり治療も進まないというのは、先にもお伝えした通りです。
本人が「この歯並びを早く治したい」と切実に願っている場合は、予約時間にきちんと来院し、家でのトレーニングもしっかりやってきてくれるので、予定期間内に治療が終了します。
そういう意味では、矯正医院に通うのは、塾に通うのと似ていると感じます。「あんなに実績のある塾に行っているのに、いつまで経っても成績が上がらない」という子は、やるべきことをしっかりやっていないから、そうなってしまうのでしょう。
いくら評判の塾に行っていたとしても、その先の成績は、本人が勉強をやるか・やらないかによるのです。矯正治療もまったく同じで、本人がその気にならないと、よくなるものもよくなりません。
成田 信一
自由が丘矯正歯科クリニック院長
歯学博士
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