子離れできない親が悪いのか、自立できない子どもが悪いのか

【特別対談】石田淳・行動科学マネジメント研究所所長(後編)

子離れできない親が悪いのか、自立できない子どもが悪いのか
(※写真はイメージです/PIXTA)

欧米では18歳になったら自立させることが一般的です。日本でも年齢を決めて、親は何歳までは関わって何歳からは自立させると一線を引いたほうがいいのではないでしょうか。歯科医師の成田信一氏が行動科学マネジメント研究所所長の石田淳氏と特別対談で語ります。

「学歴」は若いうちしか使えない

■集団スポーツの重要性

 

成田 長男は開成中高だったのですが、東大を受験するのが当たり前という風潮があって、子どもたちにも偏差値至上主義の傾向が強いように感じます。若いので、今そのように感じてしまっているのは仕方のない面もあると思いますが、学歴は若いうちしか使えないと私は考えています。新卒の就職活動では絶大な効果があるかもしれませんが、40代になったらどうでしょう。むしろ社会人になってから何をしたかといったキャリアのほうが重要だと思います。

 

石田 そうですね。学歴が完全に必要ないかどうかはわかりませんが、将来的に「どこまで自由に働けるようになるか」については、卒業校にかかわらず大事だと思います。言われたことだけやる人材よりは、自分で考えて動ける人材のほうが求められていますし、そういった人のほうがゆくゆくは自分の働き方を自分で決められるようになるでしょう。

 

成田 社会に出たら「考える力」がものをいいます。受験は与えられたものをこなすという域を超えないので、社会に出てから問題を自分で見つけ、それを改善する方法を考えることとはだいぶ違います。だから、一生学歴で食えることは絶対にありません。自分の好きな方向性とか、さらに違うことを勉強していくことも大事でしょう。そのためには英語もそうですが、物事を自分のこととして捉えられるようになって、いろいろな人とコミュニケーションが取れないといけないと思います。

 

東大に受かったから、司法試験に通ったから幸せということではなくて、その先その人が生きていく力をつけることのほうが何倍も大事です。だから、私は長男が中学に入った時、組織で生きていく力をつけるために、集団スポーツを勧めました。吹奏楽部や部活動以外でもよいのですが、とにかく集団で同じ目標を目指せるものをさせたかったのです。

 

石田 日本人の長所は協調性ですから、それを育むのに集団で何かをやり遂げようと挑戦するのはいいことですね。特に集団スポーツは最適ではないでしょうか。たとえばサッカーやバスケットボールで、相手にパスを出す時にどこにどう出すか。相手のことを考えないと自分の思い通りにはいかないことがわかるでしょう。協調性をなくしてしまったら日本人としてのアイデンティティがなくなってしまいます。

 

欧米人とアジア人では背の高さも肉体の素地もまったく違います。個のプレーヤーとして戦える強さを持っている人なら協調性がなくてもなんとでもなりますが、そうした人は日本では少ないですよね。協調性を持ってチームで戦うことが、日本人としての戦い方で、海外に出たとしても一番の強みだと思います。

 

成田 集団と個人では同じ達成でも全然違います。個人は自分が頑張ればいいだけですが、集団の場合は全員が同じモチベーションを持ち続けられるよう、選手のマネジメントも必要になるでしょう。そういうことを比較的小さなうちからやっておいたほうがいいと思います。私の次男は中高でバスケットボール部のキャプテンをしていますが、練習には来ないけれど上手な選手をどうやってやる気にさせるかに頭を悩ませています。部活で役割分担の必要性や、社会の縮図みたいなものも経験しているのだと思います。

 

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※本連載は成田信一氏の著書『自分で考え、やり抜く子の育て方』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

自分で考え、やり抜く子の育て方

自分で考え、やり抜く子の育て方

成田 信一

プレジデント社

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