英語はコミュニケーションのツール
2020年、日本の教育界にとって戦後最大といわれる「教育改革」がスタートしました。大学入試は従来の「知識・技能」偏重から、「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を加えた「学力の3要素」を多面的・総合的に評価する選抜方法へと改革されます。小学校では英語やプログラミングの授業が必修となり、アクティブラーニング(人に教えたり、体験したり、グループディスカッションをするといった、主体的・対話的で深い学び)が重視されるようになります。
日本の教育はどのように変わっていくのか、親は子どもに何をしてあげるべきかについて、行動科学マネジメント提唱者の石田淳さんと対談を行いました。
■教養・マナー・身だしなみ、留学
石田 今後、「考える力」を問う傾向は、中学受験でも強まっていくと思います。社会の動きを見ても、2019年から働き方改革によって労働基準法が大きく変わり、基本的に残業ができなくなり、全社員が年5日の完全有休を取らなければならなくなりました。そうはいっても仕事自体は減りませんから、企業側は機械化を促進したり新たに人を雇ったりすることで、人材不足を補う必要があります。
それがAIの導入であり、今後解禁されていくであろう外国人の労働者です。そうなった時に必要になるのが、AIを扱える人材や、外国人労働者と上手に付き合い、マネジメントできる人材です。2020年の教育改革には、そうした力を身につけさせていくことも盛り込まれているのでしょう。
成田 おっしゃる通りですね。今の子どもたちは生まれた時からパソコンが身近にある世代ですから、プログラミングに関しては、教えていけば大人よりも抵抗感なく学んでいけるように感じますが、問題は「考える力」や「多様な人たちともうまくやっていく力」をどう養っていくかです。日本以外の国の人たちと仕事をすることも、競っていく機会も増えますから、グローバルな視点で活躍する子どもを育てていかなくてはなりませんよね。
以前、オリエンタルランドで全スタッフの教育担当を務めた鎌田洋さんと、元ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登さんにお会いした際も、同じような話題になりました。その時に二人がおっしゃったのが、「英語」「集団スポーツ」「歯科矯正」の必要性です。
石田 確かに、英語はもうできて当たり前の時代ですよね。英語は多くの海外の人たちとのコミュニケーションのツールですから。
成田 高野さんはアメリカで数々の有名ホテルでお勤めでしたし、鎌田さんはアメリカ本国のディズニーの担当者から指導を受けた経験がありますから、「英語でストレスを感じずに普通に会話ができるように、中高で身につけるべき」と。ただし、英語はツールでしかありません。
ディズニーリゾートしかり有名ホテルしかり、組織で働く時にバランスが取れない人がいるとチームで一丸となって動けませんから協調性が必要です。子どもの頃に小中学校の集団教育はしていきますが、「目的意識を持って一丸となる」という意味で最も適しているのは「集団で行うスポーツか文化活動」だろうと。
「歯科矯正」は、多くの海外の方々と接してきた二人が、見た目の信頼感の必要性を実感したからこそ出てきた言葉です。鎌田さんはアメリカの本社の人から「なぜ日本人はみな、歯並びが悪いのか」と質問されたそうです。私もアメリカの学会によく行きますが、欧米では歯並びの悪さを忌み嫌う文化がありますから、歯科矯正には身だしなみ以上の意味があることがよくわかります。