「いつもどおり」の対応ができるスロー学習
これに対して「スロー学習」とは何か。少なくとも、ただ単にゆっくりと丁寧に勉強するということではありません。
たとえば、漢字テストで「網」という字を間違えたとします。
「網」を繰り返しノートに書いて暗記するのが「スピーディー学習」です。
「網」を辞書で引いて、「偏」と「旁(つくり)」にはこういう意味があるのか。「綱」も仲間なんだと「へぇ!」と思うことを発見し、理解してから暗記するのが「スロー学習」なのです。
理科でモンシロチョウの幼虫の脚が、胸のあたりに6本、お腹のあたりに8本、お尻のあたりに2本の合計16本だと習ったとき、理解してから暗記するためにノートにイラストを書く手間を惜しまないのも、大事な「スロー学習」です。
頭からお尻までのどの部分に6本、8本、2本が分かれているのか、自分なりにイラスト化してもいいですし、図鑑を模写するかのように緻密に書いてもいいのです。とにかく、楽しみながら、自分が理解できるようにポイントを記しながら書くことが記憶の定着に役立ちます。
算数の問題を解くときに、問題文をじっくり読むのも重要です。家庭教師をしていると、まれにこうした「スロー学習」をごく自然に実践している子どもに出会います。
そういう子どもは、「次の三角形ABCの」と読んだところで、文章から三角形の図へと視線が移り、またすぐに視線が問題文に戻ります。そして、「辺ABの中点Mと辺BCの中点Nに」と読んだところで、「えっと、辺ABの中点M……、ここか。うん、それで……」などとブツブツ言いながら読んで、また視線が図に移ります。視線が目まぐるしく動きますが、問題文はじっくり読んでいます。
そして、必要があれば、問題用紙の図に補助線を書き込んだり、余白にフリーハンドで図を書き直します。「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤しながら正解への道筋を考えていきます。
一見すると、ノロノロと学習しているように感じられるでしょう。要領の悪い子のようにも見えるかもしれません。ですが、こういう学習の仕方が最終的に合格を引き寄せるのです。
実は、こうして問題に向き合いながら「ああでもない、こうでもない」と考える習慣がついていると、「これは手ごわいぞ」と感じる問題に出会ったときや、模試、受験本番といった心理的なプレッシャーがかかった状態でも、「いつもどおり」の手順で落ち着いて対処していけるようになります。慌てたせいでミスをしたり、「無理!」とすぐにあきらめてしまうなど、「アタフタ」せずにいられるのです。
それに加え、「難しい!」と一瞬ひるんだとしても、「あの方法で解けないだろうか?」「前にも似た問題があった」というふうに、これまで学んできたことを思い出しながら、「もう少し粘ってみよう」とトライすることができます。
つまり、「スロー学習」とは、「いつもどおり」の安定した行動をとらせるためのトレーニングということができます。子どもが落ち着いて学習内容を積み上げ、いざというときに力を発揮できるようになるための学習法です。
スピーディー学習→基本的な処理能力を身につけるトレーニング
スロー学習→「いつもどおり」の安定した行動をとらせるためのトレーニング
「スロー」と「スピーディー」には、このような目的の違いがあります。
家庭で足すべき…難関校を目指すのに必要なのは?
受験勉強を始めると、まずは「スピーディー学習」がメインになりがちです。とくに、地力がある子や勘がいい子は、「スピーディー」に問題を解いて正解できるのが、ゲームを攻略するかのように楽しくて仕方がない時期があります。
ただ、小4のうちはそれで成績が右肩上がりでも、どこかで行き詰まります。中堅校であればそれで逃げ切れる可能性もありますが、最難関校や上位校を目指すのであれば「スピーディー学習」を習慣づけながら、1日の勉強時間の中に「スロー学習」を家庭で足していってあげてほしいのです。
具体的にどんな学習をさせるのか、どのように1日の勉強に組み込んでいくのかは、のちほど詳しくお伝えします。
西村 則康
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
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