親世代の中学受験との大きな「違い」
■塾のテキストが年々厚くなっていく理由
親御さん世代の中学受験と、今どきの中学受験は大きな違いがあります。
まずは「質」。30年前の超難問は、今どきの標準問題です。たとえば、30年前に開成中学で出題された算数と同じような問題が、今は偏差値40〜50の学校で出題されています。そして、すでにご存じのように、難関校の問題はどんどん難化しています。
中学受験の入試問題には、その学校の個性が反映されます。どの科目であっても、「こういう知識をしっかり持っている生徒がほしい」「こういうことに生活の中で関心を向けられる子どもを集めたい」といった学校側の思惑が明確に示されています。
最難関校であればあるほどその傾向が強く、入試問題によってよい生徒を選別しようとします。そして、毎年、目新しい問題や難問が生み出されていくのです。
それらは、実によくできた問題です。私どもからすると、「そう来たか!」と膝を打つような斬新さがあり、学校側の矜持すら感じさせます。
ところが、大手進学塾はすぐにこうした問題を分析し、解くための知識やテクニックを開発してテキストやプリントに載せ、子どもたちに教えます。「新しいタイプの問題」としてテキストで紹介された問題は、その瞬間にもう新出問題ではなくなり、子どもたちがこなしていく大量演習の一部になっていくのです。
このような、最難関校と大手進学塾のいたちごっこが毎年繰り返されています。その結果、受験生が勉強すべき「量」がどんどん増えていきます。30年前の中学受験とは、学習の「量」にも大きな違いがあるのです。
■易しくなった算数でさらに狭き門に!?
なぜ、最難関校は毎年目新しい問題を生み出そうとするのでしょうか。
2019年の算数の傾向で目を引いたのは、例年よりも易しい問題を出す難関校が増えたことです。これまでほとんど見られなかったような基本問題が出されたり、塾で「捨て問」として扱われるであろうレベルの、クセのある、いわゆる難問の割合が減りました。
「捨て問」とは、入試本番で1つの問題に時間をかけ過ぎると時間のロスで致命傷になりかねないため、「できそうもないと感じたら飛ばそう」という意味で使われる言葉です。
「難しい問題が減ったのなら、ラッキー!」と思われるかもしれませんが、難関校を目指すお子さんにとっては、そうとも言い切れません。
難関校ほど算数が難しくなりがちなのは、思考力を問おうとするからです。しかし、難し過ぎる問題は、算数を非常に得意とするごく一部の受験生にしか手がつけられません。多くの受験生が「捨て問」と判断してしまえば、その問題の得点は合否ラインへの影響が薄くなり、結果として算数の平均点が下がります。つまり、算数ができない子も合格してしまう可能性が高くなるのです。
そこで、受験生が問題をパッと見たときに、まったく手が出せないというレベルではなく、これまでに似た問題を解いてきたからできるのではないかと思える、「捨て問」にされないギリギリのレベルに問題を設定し、条件をちょっとだけ複雑にするという問題へと「易化」されたわけです。
だから、与えられた条件をしっかりと読み取り、それに基づいて図を書き、情報を整理するという、算数の問題を解くときに必要な作業を受験本番で当たり前に行えれば正解できます。
言い換えれば、これらの問題は、「しっかりと読み取り、それに基づいて図を書き、情報を整理するという学習習慣がついていますか?」と問うているのです。
私の言葉で言えば、「あなたはスピーディー学習だけでなく、スロー学習をしていますか?」ということです。
西村 則康
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
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