(※写真はイメージです/PIXTA)

企業価値がどのくらいになるかを算出することで、買収企業(譲受企業)、売却企業(譲渡企業)両方がM&Aの計画を立てられるようになります。買収価格はどのように決まるのでしょうか。コンサルタントの井口嘉則氏が著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

買収価格の算定方法

M&A対象企業の企業価値を評価する方法には大きく三つの方法があります。

 

(1)コストアプローチ

 

コストアプローチとは、貸借対照表(バランスシート)の純資産をベースにした評価方法で「純資産法」とも呼ばれています。株式公開していなくてもどの企業も財務諸表は作成していますから、財務諸表ベースで算定することができます。

 

コストアプローチには、さらに3つの方法があります。

 

①簿価純資産価額法
貸借対照表上の資産から負債を差し引いて株主持ち分を算出する方法です。ただし帳簿は取得原価主義なので、時価が反映されにくいという難点があります。

 

②時価純資産価額法
帳簿上の資産や負債を時価評価し算定します。ただし時価評価のための時間が掛かります。

 

③時価純資産価額法+営業権(のれん)法
時価純資産価額に会社の収益力である営業権(のれん)を考慮することで、将来の企業価値を加味して表す方法で、コストアプローチの中では最もよく使われる方法です。簡便な計算方法は、純資産額+のれん代で、のれん代を直近の営業または経常利益×5倍程度で見込みます。

 

(2)マーケットアプローチ

 

類似企業や市場での株価を基準に算定します。類似企業に適合した会社が見つかれば、客観性の高い時価評価が行えますが、ベンチャーなど創業間もない企業や類似企業が見つかりにくい場合には適用しにくい方法です。またその時の株価水準がマーケットの状況によって影響を受けやすくなります。

 

マーケットアプローチには、①類似会社比準法と②類似業種比準法と③市場株価法の3種類があります。類似会社比準法では、類似した株式公開をしている複数企業の財務指標の平均値から、対象企業の株価を算定します。市場株価法は上場企業にのみ当てはめられる手法で、過去6ヶ月程度の平均株価を評価額とする手法です。

 

(3)インカムアプローチ

 

インカムアプローチは、将来生み出すであろう利益またはキャッシュフローに注目し、それにリスク等を加味した割引率を適用して企業価値を導き出す方法です。①収益還元法、②配当還元法、③DCF法の3つがあります。

 

①収益還元法
企業・事業の将来の利益を推測し、そこに事業リスクを加えて割引率を適用して企業価値を算定する方法で、不動産などの収益物件の取得などに用いられます。

 

②配当還元法
株主が受領する配当金に注目して企業評価する方法です。

 

③DCF法
将来得られるフリーキャッシュフローを推定し、それに継続価値を加えた上で、資本コストで割引計算をして事業価値を算定し、それに現預金・余剰資産といった非事業用の資産を加算して「企業価値」とします。

 

将来のフリーキャッシュフローの算定精度に依存します。

 

ポイント
様々な企業価値算定方法の中で適したものを利用する注・本項は株式会社M&A総合研究所等のサイト情報を参考に作成しました。

 

次ページM&Aの買収金額はどう決めるのか?

※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業計画書の作り方100の法則

事業計画書の作り方100の法則

井口 嘉則

日本能率協会マネジメントセンター

経営環境が激変する最悪シナリオを乗り切る「事業計画書」の立て方・作り方とは? 「ビジョン・戦略立案フレームワーク」で何を/どの段階で行うかがわかる“これからの”実践教科書。 コロナ禍にあっても、事業計画の立…

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