(※写真はイメージです/PIXTA)

資金調達アドバイザーの田原広一氏は、まず創業融資を公庫で受けること、そして創業2年で公庫以外の二行から融資を受けることをオススメしています。独立開業から事業を軌道に乗せるまでの「賢い融資の受け方」を見ていきましょう。

公庫で創業融資を受けたら…

本連載で解説してきたとおり、創業~1年(期)目で二行から融資を受け、売上・利益アップに努めてくれば1年(期)目の決算は大幅黒字とまではいかなくとも、少なくとも赤字経営に陥っているリスクは低いはずです。

 

預金残高も借入をした分、順調に積み増して2年目を迎えたところで、視野に入ってくるのが三行目との付き合いです。

 

私は創業2年で公庫以外に、2つの金融機関から融資を受けることをオススメしています。

創業2年目で「三行目の融資」を受けるべき理由

理由は大きく3つあります。1つは一行で借りて、再度、同じ金融機関から借りるのは、タイミングを計るのが難しいことが挙げられます。融資を受けやすいのは、会社の業績がクリアになる決算直後で、1回借りたら、次の決算が終わるまではなかなか借りられないというのが原則です。

 

しかし、「2店舗目を出す計画を立てていたところ、なかなかない好条件のテナントの空きが出た」「予想以上に売上が伸び、人員を補充したい」ということが1年内に起きる可能性も大いにあり得ます。投資のチャンスを逃さないためにも、公庫以外に複数の金融機関と付き合っておくことが大事なのです。

 

2つ目は、複数の金融機関と付き合うことで、最新の情報が入りやすく、ゆくゆくは金利面で競ってくれるなど、より良い条件で借りやすくなることが期待できます。

 

3つ目は、金融機関の事情が変わった際のリスクヘッジです。

 

事情が変わる最大のリスク要因は、担当者や支店長の異動です。金融機関は不正防止のために、2~5年周期で人事異動を行います。以前の担当者とは密な関係ができており、融資の手続きもスピーディに実践してくれていたのが、異動に伴って、ビジネスへの理解やスピード感など状況が一変することもあります。

 

また、支店長が替わると、融資の姿勢自体が変わることもあり得ます。また、近年の傾向として、金融機関は効率化のために支店の統廃合を進めており、法人の融資を行う支店が限定され、本部の方針のもと、店舗によって営業戦略が転換されるようなリスクもあります。

 

私の会社でも、複数の金融機関とお付き合いがありますが、各行の違いだけでなく、支店、担当者によっても融資に対する姿勢には違いが見られます。

 

特に創業融資については、国の方針として積極的な取り組みが推進されているといっても、本気で力を入れているところと、そうでないところでは大きな差があります。

 

このように、各行、各支店、各担当者で事情はさまざまで、今後も金融庁の通達などにより、業界全体を巡る環境、融資事情が転換していく可能性も否定できません。

 

予測し得ない将来に向けての保険としても、複数の金融機関と付き合うことが、資金繰りを安定させる策として有効なのです。

複数行と対等な関係性をキープすることが大切

なかには、メインバンク以外と取引をすることによる影響を懸念するような方もいます。しかし、近年では全リスクを負うことを回避し、金融機関同士で連携し、融資を行うようなケースも増えています。何行と付き合っても、個々の付き合いに支障はないと考えるべきでしょう。また、ゆくゆく交渉材料とするならば、メインバンクとライバル関係にある金融機関と付き合うのも一つの手です。

 

ただし、交渉材料として他行との借入状況の情報を出すのはいいとしても、「XX銀行の融資に対する対応が遅い」などと、他行の悪口を吹聴するのは、口が軽いと疑われるだけなのでNGです。また、担当者の変更で、“合わない”人に担当が変わったとしても、不満をあからさまに態度に出すのも得策ではありません。

 

例えば一つをメインバンクにしたら、もう一行では定期積金を実践します。三行目の候補には、定期的に試算表を提出するなど、複数の金融機関と上手に付き合いを継続していくように心掛けましょう。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

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