(※写真はイメージです/PIXTA)

資金調達アドバイザーの田原広一氏は、金融機関が“貸したくなる”条件とタイミングを知り、そこに向けた備えさえしっかりしていれば、誰でも資金調達が可能と語ります。創業2年目以降に融資を受ける際のポイントを見ていきましょう。

「決算直後」や「確定申告の直後」が狙い目

融資の手続きをスムーズに進めるためには、段取り、備えをしておくことに加え、実行するタイミングを計ることが肝心です。

 

その最大のチャンスが創業時とするならば、創業後の融資を受けるタイミングとしては、決算や確定申告が終了した時点が資金調達の好機となります。

 

そこで、期途中の作業としては試算表を定期的に送り、決算が終わったら、銀行への報告、申込み作業に着手することになりますが、ポイントは決算が終わる前に一度、相談することです。

 

「この予想値で着地しそうですが、どれくらい借りられるでしょうか」

 

と、これまで取引してきた一~二行目に融資提案を求めるわけです。

 

事前に相談するのは、「借りやすく」かつ「なるべく多く借りられる」金融機関を探るためです。

 

そのためには決算報告とともに、今期の展望を事業計画などにまとめて提出する。あるいは、設備投資を予定しているならば、その時期と金額を伝え、積極的に動いてもらえそうな金融機関を模索するのもよいでしょう。

 

その感触を探りつつ、「公庫に再アタックする」「新しい信金に融資の申込みをする」など、より有利な条件、融資額が引き出せるところをチョイスするわけです。公庫と信金の保証付融資では、与信枠が異なるため、一~二行目でどこからどの程度借りられるのか、融資額と返済期間を踏まえつつの交渉も肝要となります。

有利な条件を引き出す「決算書」のコツ

■「将来性を感じさせる見せ方」が重要

決算時に有利な条件を引き出すには、単純に数字を見せるだけでなくちょっとしたコツが必要となります。最大限に融資額を引き出し、有利に交渉を進めるためには、数字の裏にあるストーリー、翌期(翌年度)以降の将来性の見せ方も工夫しましょう。

 

例えば、売上が年商1億円としても、月次の売上が右肩上がりで年商1億円を達成したのか、徐々に右肩下がりで1億円に着地したのかでは評価が異なります。

 

ポジティブにとらえられるのは前者です。商品やサービスが支持され、業績も右肩上がりが期待できる将来性を感じさせるストーリーをプレゼンできるため、融資額が伸びる確度が高まります。

 

その観点では、年度内の月次の売上の立て方も、右肩上がりのストーリーになるよう注意を払っておくとよいでしょう。

 

さらに年度内だけでなく、年度をまたいだ業績拡大の具体的なシナリオが提示できるかもポイントです。

 

例えば、私の会社では1期目の売上は約2500万円でしたが、1期目の後半~2期目の最初の2~3ヵ月の数字が伸びていたため、2期目は最低でも前期の倍、年商5000~6000万円は達成できるという売上予測を提示しました。ビジネスの将来性を買ってもらい、公庫からさらに追加で1000万円、メガバンクからは500万円の信用保証協会付融資に成功することができました。

 

また、2期目の決算終了後には、再度公庫から2000万円の追加融資を受けていますが、これも3期目は売上が最低でも1億5000万円は達成できるという予想値を出したことが評価につながりました。

 

ここで直前の決算だけで判断するならば、2期目の売上自体は約6500万円。売上規模に対する公庫からの融資額としては、創業時の800万円、1期終了後の1000万円さらに2期終了後に2000万円を合計して3800万円の融資は、過大というのが一般的な見方になります。

 

しかし、3期目に1億5000万円の売上の会社に成長するというプレゼンができれば、合計3800万円の融資額も妥当という評価を引き出すことが可能となります。

 

現行の制度では、創業2年以内に公庫から1000万円を超える融資を受けるのは困難ですが、民間の金融機関に対してこうしたプレゼンは十分効果があります。

 

■直近の決算が赤字でも、業績が右肩上がりならば可能性アリ

その点では、たとえ直近の決算が赤字でも、将来性あるシナリオが提示できれば、融資を受けられる可能性が出てきます。

 

私のお客さまで、法人を設立して創業2期目に入った段階で、売上が1500万円を超し、順調に事業を拡大している方が融資の相談に来ました。

 

直近の決算こそ赤字だったものの、2期目に業績が伸びてきており黒字転換目前であったこと、さらに自己資金が500万円以上あり、事業経験10年以上、過去のクレジット事故歴なしという好条件も後押しとなり、支店決裁で1000万円の融資に成功することができました。

 

自己資金と事業経験が豊富にあり、業績が伸びてきていれば、決算が赤字でも挽回し得る好例といえます。

 

■決算月は「お金がある時期」にする。前倒しもテクニックの一つ

また、融資は手元に現預金があるほうが評価につながります。つまり、決算月は最も「お金がある」時期に設定するのが正解です。

 

よって設備投資を予定しており、その支払いと融資を受けたいタイミングが重なるようであれば、支払い前に決算の前倒しをするのも手です。

 

私の会社では、2期目にオフィスの引っ越しをしたのですが、その保証金(1050万円)を11月に支払わねばならないため、決算月が11月だったのですが、保証金を支払う前の10月締めで決算を実施したことがあります。

 

決算月を変更してまで融資してもらう会社は基本的にないと思いますが、この判断がなければ、保証金支払後の運営が苦しくなっていた可能性があるためベストな判断だったと思っております。

 

こうして現預金を残した状態で融資に臨めたことで信頼もアップし、公庫から2000万円を引き出すことができました。

 

「事業年度は1年を超えてはいけない」ため、決算月の後ろ倒しは不可ですが、前倒しに関しては問題ありません。手続きとしては、株主総会の決議を経て、税務署、都道府県事務所などに届け出をすればOKです。

 

もちろん、毎年、決算月をコロコロ変えるのは良くないものの、融資を有利に運ぶ一つのテクニックとして覚えておきましょう。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

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田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

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