(※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性は、長年ひとり暮らしを続ける高齢の母親を心配していました。健康はもちろん、母親に万一のことがあれば相続税が不安です。そこで妻に「同居」による節税を持ち掛けますが、「冗談じゃないわ」と一蹴され…。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

90代の母親の相続が心配

今回の相談者は、60代の大村さんです。高齢で独り暮らしをしている母親の将来の相続に不安があると、筆者のもとを訪れました。

 

大村さんの母親は、20年以上前に父親が亡くなってから、ずっとひとり暮らしをしてきました。母親は今年90歳と高齢なため、あれこれと不安なことが出てきたといいます。

 

大村さんには50代の妹がいますが、ふたりとも結婚後は実家を離れ、それぞれ自宅を購入し、配偶者や子どもと生活しています。20代で家を出てからは、母親と同居したことはありません。

 

大村さんの母親は実家が裕福だったことから、東京都心部におよそ9,000万円の自宅を保有するほか、3,000万円の収益物件、8,000万円の預貯金や投資信託など、合計約2億円の資産を保有しています。

 

将来の母親の相続が少しでもスムーズになるよう、いまからできる対策をしておきたいと考えています。

夫婦だけでは、方向性が定まらず…

大村さんは最近、自宅そばに広い中古住宅が売りに出されているのを見て、家を建てて母親と同居すれば、互いに安心なうえ、節税にもなるのではと考えたといいます。

 

「自分ではいいアイデアだと思い、喜んで妻に話したのですが、妻は〈いまから同居なんてしたくないわ〉と、冷たく突き放されてしまいまして…」

 

大村さんの妻は、「お義母さんは少し認知機能に不安が出てきたように見えるから、ホームに入ってもらったほうがお互いのためにいいのでは?」といっているそうで、大村さんは夫婦だけでは判断できないため、第三者のアドバイスがほしいとのことでした。

いくら節税できても、ストレスを抱えてしまっては…

居住用の特例は、同居する相続人がいれば、330m2まで80%減額でき、確実な節税となりますが、それには満たすべき要件がいくつかあります。

 

大村さんの母親は90歳と高齢ですが、いつ相続が発生するかはわかりません。これまで長年自分たちのペースで生活してきた大人が、いくら親族とはいえ、突然ほかの人と同居することになれば、ストレスになるのは当然でしょう。

 

数字上、どんなに相続税の節税になったとしても、お互いにストレスを抱えて生活することになってはたまりません。

節税の方法はいくつかある

いままでの自分たちの生活のリズムを大切にして、快適な毎日を送るには、同居による節税ではなく、金融資産を活用した不動産対策をして、貸付用の特例を適用する方法も選択肢です。

 

また、母親にはケアつきの高齢者住宅に住み替えてもらい、自宅を賃貸住宅に建替える方法も検討できるでしょう。

 

大村さんにいくつか選択肢があることを説明すると、「安心しました。妻と妹の3人で、一緒によく話し合ってみようと思います」と、安堵の表情を見せてくれました。

 

いくら節税になったとしても、ストレスを抱えて苦しむことになっては、対策の意味がありません。状況をよく踏まえたうえで、ストレスのない方法を選択することが重要なのです。


 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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