自宅を売りたい母 vs. 居座り続ける長女一家…関係を決裂させた「衝撃のひと言」【相続のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

父が亡くなり、ひとり暮らしとなった母は単身用アパートへ引っ越しますが、空き家となった実家に姉一家が住みついてしまいます。母が老人ホーム入居のため実家を売却しようにも、姉一家は出ていかず、母親との関係は最悪に…。ついには、姉の放ったひと言で、親子の関係が決裂してしまいます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

母親名義の家に「長女一家」が暮らし始め…

今回の相談者は、40代会社員の田中さんです。母親が保有していた財産を巡り、姉とトラブルになる可能性があるとして、筆者の元を訪れました。

 

数ヵ月前に亡くなった母親は、公正証書遺言を残していましたが、それがあっても円満解決は望めないと予想され、今後の対応を思いあぐねているというのです。

 

田中さんの母親は、10年以上前に父親が亡くなった際、長年暮らした広い自宅を離れ、田中さんの自宅近くの、利便性の高い立地の単身用アパートに転居しました。

 

田中さんは姉との二人姉妹で、それぞれ家庭を築き、配偶者と子どもと生活しています。

 

姉は、母親が引っ越して実家が空き家になったことから、「子育てするには、広い一軒家がいい」などといって、強引に家族で実家へ引っ越してきました。母親は拒絶していましたが、最終的に姉の執拗な交渉に根負けしたかたちです。

実家を売却したい母親、出ていかない長女一家

その後、数年が経過し、年齢を重ねた母親はひとり暮らしが不安になり、老人ホームへ入所することにしました。しかし、手持ちの預金を減らすのは心細いため、今後の老人ホーム入居費用や生活費の捻出のため、姉家族が住んでいる自宅を売却しようと考えました。

 

しかし母親が「自宅を売りたいから引っ越してほしい」といって引っ越しを促しても、姉は「上の子が卒業するまで」「下の子が卒業するまで」などといいながら、何年も居座り続け、出ていく気配がありません。

 

母親はやむなく、預金から入居先のホームの費用を支払い、毎月の利用料金は年金でどうにか捻出しているといった状況です。

母親が遺言書作成を決意した、姉のひと言

このような事情から、母親と姉との関係は緊張したものとなり、次第に悪化していきました。そしてついに、姉は田中さんもいる前で、母親に向かって「自分はこれから先も、面倒を見るつもりはないから」と宣言したのです。

 

「母が遺言書作成を決意したのは、姉の〈面倒を見るつもりはない〉という発言が理由だと思います…」

 

母親の遺言書には「全財産を、二女の田中さんに相続させる」と書かれており、姉家族が住む家も含め、母親の財産のすべてが田中さんのものになるという内容でした。

 

母親のサポートは、ずっと田中さんが行っており、姉が手を貸したことはなかったといいます。

 

そうしたこともあり、母親は常に田中さんを信頼してきました。いうなれば、遺言書の内容は母親の田中さんへの感謝の気持ちだったということでしょう。

諍いにメリットなし…冷静かつ穏便に話を進めよう

田中さんの母親はこの春に亡くなり、最近四十九日の法要を終えたばかりです。しかし、姉にはまだ遺言書の存在を伝えていないため、これから田中さんが伝えることになります。

 

財産は自宅と預金で、約7,000万円。資産の割合は自宅が75%、預金が25%程度です。

 

遺言書があることから、不動産や預金を田中さん名義にすることは可能ですが、筆者からは、まずは姉に遺言書の内容を伝えたうえで、名義変更に着手するようアドバイスしました。

 

諍いを前提で向き合う必要はなく、礼儀をもって冷静に対応をしたほうが、のちの展開がスムーズだといえるからです。また田中さん自身も、そのほうが気楽だとのことでした。

 

いちばんの問題は「家を明け渡してもらえるかどうか」ですが、そもそも母親の存命中から約束していたことでもあり、田中さんから改めて期限を切ることもできると提案しました。

 

家賃をもらって貸す選択肢もありますが、なし崩しとなる可能性もあるため、お勧めはできません。やはり「明け渡し」ありきで進めることが必要でしょう。

 

万一、弁護士への依頼や家庭裁判所での調停が必要となれば、金銭的な負担や精神的ストレスが大きくなるばかりで、田中さんにも姉にも、メリットはありません。その点からも、冷静な事情説明と話し合いを行うようアドバイスしました。

 

いずれにしろ、田中さん名義の家になるわけですから、いつまでも姉家族が住み続けることはできないと、はっきり示す必要があります。「母親の意思」を尊重するためにも、この機会を逃すわけにはいかないといえます。


 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 
相続対策専門士

京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。

著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

著者紹介

連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例

本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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