(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスは、燎原の火のごとく世界中に広がりました。小売りというグローバルな産業を焼け野原にしてしまいましたが、その灰のなかから、これまでより進化した、健全で勢いのある業界が芽生えるはずです。ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で解説します。

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    先見性、気概を持った企業が主役に躍り出る

    ■新たな明るい時代をめざして

     

    イギリスの高級百貨店セルフリッジの創業者ハリー・ゴードン・セルフリッジの言葉を胸に、前に進むかどうかは私たち次第だ。むろん、パンデミックで誘発されたチャンスを無駄にするとか、未来から逃げるとか、現状にしがみつくといった選択肢がないわけではない。実際、明らかにそう決め込んだ企業は多い。

     

    だが、もっと勇気ある選択は、これまでを顧みて再考し、復活に挑むという、100年に一度の機会を受け入れることだ。事業、コミュニティ、業界を復活させると言っても、以前の状態に戻るのではなく、新しい世界を築き上げることである。かつての「平常」に戻るのではなく、もっと明るく充実した状態をめざして歩み出すのである。

     

    機が熟して振り返ったとき、「パンデミックがきっかけで、新世代の素晴らしい独創的な小売業者が誕生した」と実感する日が来るはずだ。それは、オンライン、オフラインの双方で舞台に上がり、明確な目的意識と価値観を消費者に示すことができる小売業者である。

     

    そして、小売りの未来へと道を開くのが、前出のリテールタイプである。そのいずれも、独自の素晴らしいストーリーに裏打ちされている。特に卓越した企業は、オンラインとオフラインで圧倒的なコンテンツを武器に、消費者中心のエコシステムを構築し、カルチャーの醸成、エンターテインメントの演出、ノウハウの提供、優れた商品の設計に取り組み、こうした独自の魅力を強化する。

     

    過去のショッピングモールは、未来のコミュニティの拠点となり、見た目も中身も充実した空間として、私たちが暮らす都市や郊外に溶け込んで機能するようになる。エネルギーと活気がはっきりと伝わってきて、時間や費用を投じるだけの価値があると感じられる場だ。

     

    新型コロナウイルスは、手に負えない山火事のように、小売りというグローバルな森で猛威を振るい、焼け野原のようにしてしまった。枯れ木は灰と化した。だが、その灰のなかから、これまでより進化した、健全で勢いのある業界が芽生えるだろう。目下の危機がもたらすチャンスを傍観せずに正面から受け止める先見性、気概、強みを持った企業こそが小売りの新時代の主役を担うはずだ。

     

    ダグ・スティーブンス
    小売コンサルタント

     

     

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    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

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    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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