いま日銀のやっている量的緩和はどんどんお金を刷って、金融市場に流し込んでいるだけです。「ヘリコプターマネー」といっても、金融機関相手にお金をばらまいたところで、実体経済の回復に繫がらないことははっきりしています。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

日銀の量的緩和は日本の景気に効き目がない

ところが、そもそも日本は長期のデフレで実体経済に需要がありません。モノやサービスに対する需要がないのです。それで「手っ取り早く運用できるのはどこか」となって、一年未満のお金の貸し借りをする短期の金融市場に白羽の矢が立ちます。

 

そして、日本の金融機関が持て余しているお金を低コストで吸い上げられればいいチャンスだと、外国の金融機関や投資ファンドがやってきます。こういう連中がそのお金を吸い上げて、より高いキャピタルゲインが望める市場(それは日本ではなく、アメリカやよその国の市場です)に投資します。つまり日銀の量的緩和で出たお金は、日本の景気にはほとんど効き目がないのです。

 

「ヘリコプターマネー」といっても、金融機関相手にお金をばらまいたところで、実体経済の回復に繫がらないことははっきりしているわけです。

 

実際バーナンキの「ヘリコプターマネー」も、実体経済に直接効果があったとは言い難かったのです。FRBは量的緩和をしましたが、財政はFRBの管轄ではないので、財政の拡張に関与できませんでした。財政の拡張は政権の役割です。当時のオバマ政権は確かにリーマン後の不況対策で財政拡張をやろうとしたのですが、議会で共和党に反対され、ほとんどできませんでした。そのためFRBの量的緩和は実体経済良化にほとんど繫がりませんでした。

 

ただしアメリカの場合は株式市場と実体経済が深く関わりあっています。まず株式市場は安定していて、量的緩和の影響で少し上がりはじめます。そうすると、アメリカは株式をやってる人が非常に多いから、だんだん「お金を使おうか」というトレンドになっていきます。それで実体経済が回りはじめる。

 

それから株価が高くなると、企業は資金調達をしやすくなります。IPOなど増資で賄えるのです。こうなるとゼロコストのお金を引き上げられるわけですから、これを新しい技術やビジネスに投資できます。それで設備投資の環境が良くなる。ということで実体経済が徐々に立ち上がってくるというわけです。

 

これはほとんど株を持っていない貧困層は無関係になってしまいます。つまり格差が広がるというマイナス効果はあります。しかし、とくにアメリカの場合、株価上昇は全体のパイを大きくできるわけです。環境は良くなります。

 

株投資を一般の人たちがあまりやらない日本の場合には、これと同じような効果は望めません。まったくないというわけではありませんが。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

 

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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