右肩上がりの成長を見せ、一見好調なベトナム不動産市場ですが、実際には多くの問題を内包しています。そしてついに、政府・銀行による不動産投機引き締めの動きが鮮明となってきました。その裏には「投機家・転売家が市場の減速を懸念し、損切りに走る」とのリスク予測が見え隠れしています。今後の見通しについて、南部ホーチミンを拠点に不動産ビジネスを展開するプロフェッショナル、徳嶺勝信氏が解説します。
ベトナム不動産市場、「冬の時代」が到来
ベトナム不動産の先行き不透明さから、記事投稿がしばらく途絶えていました。今回は、改めてベトナム不動産市場の動向を注視し、市場や行政機関からの情報、これらを裏付けるデータ等をもとに、これからのベトナム不動産市場がどう進むのかを検証します。
現時点のベトナム不動産市場は、大きく北部(ハノイ市)と南部(ホーチミン市)の2つに分かれており、若干の価格の違いはあるものの、土地や戸建住宅、マンション、ヴィラ、リゾート、工場物件と、それぞれ価格と取引の上昇が続いているため、一見すると好調な市場だと捉えられています。
しかし実際には、取引流動性や収益率の低下、銀行による貸付強化、債券処理、金利上昇、政府による規制などで、市場では思わしくない動きが随所に現れています。
これらの動きを受けて、CBREベトナム住宅局長のVo Huynh Tuan Kiet氏は、「この不動産市場の引き締めの動きにより、不動産投資家はいくらか影響を受けるだろう」と語り、その上で「投資家心理は2つの方向に変動している」と、述べています。
変動している投資家心理の1つ目として、多くの投資家は金融市場の不安定さを注視しており、不動産投資に対して心理的な揺らぎが生じている、という点が挙げられます。
もう1つは、実際に不動産購入を躊躇する投資家が増えているため、不動産投資を検討している投資家はなおさら購入に慎重になっている、という点です。購入が慎重になる一方で、すでに不動産を保有している投資家たちのなかでは、現時点で売却すべきか、即座に売却するために損切が必要かどうかを検討している人も少なくありません。
しかし、同氏は、「不動産投資は、インフレリスクのなかでも多くの投資家にとって、依然として選択される投資市場だ」とも述べています。
このような意見は、ほかにも多くの不動産専門家が発言しているため、この先のベトナム不動産市場がどのような方向に進むのか、不透明な状態はしばらく続くと考えられます。
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VINA COMPASS Co., Ltd.
General Director
沖縄県宮古島生まれ。久留米工業大学を卒業後、トヨタグループ系列の株式会社アイチコーポレーション入社。特殊車両メーカーの営業部門で16年勤務。
2004年、商談で訪れたベトナムホーチミンに魅了され、独立起業、単身にて渡越。 2006年、取引先の製薬会社と合弁で排水処理会社を設立。
国営事業であるホーチミン市病院排水処理事業の入札業者として認証を受け、在籍中235ヶ所の病院排水処理を手掛ける。2012年、合弁会社の株を売却。新たに浄排水処理会社としてSHINY VIETNAM社、不動産・建築会社としてSHINY REAL社を設立。現地企業やベトナム政府事業の実績を活かし、越人コミュニティに入り、浄排水処理事業を手掛ける傍ら、日系大手への環境コンサル支援や、現地最大手の不動産デベロッパー、VINHOMESの日系唯一の販売代理店としてCentral Parkプロジェクトの販売を手掛けた。2018年、SHINY社、合弁解消後、新たに独資でVINA COMPASS社を設立。不動産販売仲介、賃貸仲介、管理運営、内装工事、進出支援コンサル業を手掛ける。特に進出時の事業許可、会社設立時のリスクヘッジ関連を得意としている。
VINA COMPASS社ウェブサイト:http://www.vinacompass.com/
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