(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの第4波は、ベトナムの不動産市場にも影を落としています。郊外の戸建てやマンションが注目される一方、新規感染者の約8割を占める南部地域と感染者の少ない北部地域では市場の動きに差が現れてきました。また、全体的な不動産価格の上昇にも、一筋縄ではいかない複雑な事情が潜んでいます。南部ホーチミンを拠点とし、不動産ビジネスを展開する徳嶺勝信氏が解説します。

ベトナム経済は、表面的な情報だけでは読み切れない

これまでも何度か記事でご紹介してきたとおり、ベトナムの不動産市場は2つに分かれています。ひとつはベトナム人中心の不動産市場、もうひとつは外国人中心の市場です。

 

その理由として、外国人がベトナムで不動産を購入する際の制限があります。外国人が購入できるプロジェクト(政府認証済み)のコンドミニアムは1棟あたり30%以下、ヴィラを含む戸建て(外国人購入制限、政府認証済み)は地区内250戸以下となっており、同物件であっても、外国人価格とベトナム人価格が存在します。

 

ベトナム不動産の購入を希望する日本の方に状況を説明すると、「この価格帯ではベトナム人は購入できないでしょう。購入者は外国人ばかりでは?」と言われることがあります。筆者は、「いいえ、ベトナムの不動産市場はベトナム人のみのマーケットで十分回っているのです。逆に、外国人向けの市場のほうが、制限されているため取引は少ないです」と答えています。

 

不動産から少し話がそれますが、先般、米ブロックチェーン分析企業のCHAINA LYSIS社が発表した「世界の暗号資産普及指数(Global Cryptocurrency Adoption Index=GCAI)」に関する報告によると、ベトナムは暗号資産(仮想通貨)の普及度は世界1位(154ヵ国中)となっています。この指数は各国1人当たりの暗号資産の価値、送金額、預入額、P2P(Peer to Peer=ピア・トゥ・ピア)の取引高などをもとに暗号資産の普及度を測定した結果です。

 

ベトナム国内では仮想通貨での合法的な決済手段は認められておらず、通貨として使用することは違法です。しかしながらこの調査のように、普及率は世界1位です。不思議な傾向ではありますが、この現象から読み取れるのは、ベトナムには、表面に見えている経済だけでなく、見えていない実質的な経済が存在するということです。ベトナムで投資や事業展開を考えている個人、企業はこの地で成功する為には表面の情報だけを鵜呑みにせず、現地の実質経済をよく研究する必要があります。

 

上記を踏まえたうえで、当方では市場規模の大きいベトナム人不動産市場の動きを見据えて外国人市場を検証しています。

第4波、国内外の市場に大きな影響も

4月27日から発生した第4波では、8月23日時点での感染者は35万4356人増加して累計感染者数は35万8456人となり、21日に1日当たりの感染者最高の1万3439人を記録しました。21日時点での感染死者数は8667人となっており、第4波以降では8632人となりました。実に第4波が発生した4ヵ月近くで、感染者累計と死者累計の双方の約99%を占めています。

 

とくに南部地区ホーチミン市の感染者数が多く、最も厳しい社会隔離政策16号(ロックダウン)を発動していますが、延長が重なって9月15日までとなり、2ヵ月半あまり継続することになりました。この第4波は経済も含め、国内外の市場へ大きな影響を与えています。

 

第4波による不動産市場への影響を鑑みながら、北部と南部での取引状況も含めて解説していきましょう。

 

最新の感染状況では、新規感染者の約8割を南部地域が占めており、北部地域、南部地域の不動産市場でも少し違いが出ています。

 

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