日本の平均賃金は30年間伸びていない
■世界で縮む日本
「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている」。2021年1月27日、コロナ禍の中で春季の労使交渉が始まり、連合の神津里季生会長とオンラインで会談した経団連の中西宏明会長はこう発言しました。OECD加盟36カ国の2019年の平均賃金で日本は20位にも入れず下位。G7では最低です。日本はこの30年間、ほとんど伸びませんでした。
日本の経済や豊かさをめぐる国際的な地位は低下し続けています。その目安となるデータには事欠きません。2020年の日本の名目GDPはドル換算で5兆ドル余り。アメリカと中国に次いで3位ですが、中国の3分の1近くの水準まで落ち込んでいます。世界におけるGDPのシェアも減り続けています。
日本のシェアは1995年に約18%ありましたが、2005年は約10%、2020年には約6%近くにダウン。さらに三菱総合研究所は「未来社会構想2050」の中で2050年には1.8%に落ち込むと予測しています。日本が世界で相対的に縮小しているということです。
また、日本の1人当たりのGDPは、シンガポール、韓国に抜かれ30位。ドイツ、フランス、イギリスを下回っています。1人当たりの国民総所得(名目)は、外務省によれば、2018年の日本は4万1310ドル。9位のシンガポール、13位の香港に引き離されて20位に甘んじています。日本はアジアにおいても、必ずしも豊かな国だと胸を張れるレベルではないということです。
また、OECDのデータによれば、2020年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たりの付加価値)は、7万8655ドル(809万円)。OECD加盟38カ国中28位と低い水準です。OECDの「より良い暮らし指標」によれば、2017年の日本の生活満足度は、先進38カ国中29位でした。
少し深刻なデータです。国連児童基金(ユニセフ)が2020年9月、38カ国に住む子どもの幸福度をめぐる報告書を公表しました。総合順位1位はオランダ、2位デンマーク、3位ノルウェーの順。日本は20位、アメリカは36位、最下位はチリでした。
ところが、「精神的な幸福度」という分野では日本は37位と最低レベルでした。生活満足度の低さ、自殺率の高さが響きました。15歳~19歳の10万人当たりの自殺率は、ギリシャが1.4人と最少、日本はその5倍余りの7.5人でした。経済状況では、日本は失業率が一番低く、子どもの貧困率も18.8%と平均の20%を下回りました。
こうしたデータを謙虚に受け止めたいと思います。日本と日本人の実力を見つめたいと思います。世界との比較では決して胸を張れる位置にいないことが分かります。
ただ、データや数字やランキングには、表面的な要素もあって、必ずしも本質を象徴しているとは限りません。ある程度の豊かさがあって、国民全員に自分たちの居場所があって、子どもたちが笑っていられる国、社会であれば、国際比較など、必ずしも気にする必要はないという考え方もあります。
国際ランキングもさることながら、私たち一人ひとりが、お互いの存在、個性を受け入れ、認め合う社会、笑いが絶えない社会、自由に物事を考えられる社会、自考する社会、そんな土壌が広がれば、未来を切り拓く芽が生まれてくるのではないでしょうか。
そこから活力が生まれ、夢が広がり、新たな産業を創り出す技術が芽生えるのではないでしょうか。国民の本当の豊かさという実感や、経済の発展という数字は、後からついてくるのではないかと思います。
私はあきらめてはいません。私たち国民みんなが、それぞれの立場で、それぞれ自考し、行動すれば、ものすごいパワーになるだろうと思います。それは、例えば、有能な政治家を選ぶことよりも、はるかに大きく、意義があることかもしれません。
繰り返しますが、自考は、私たち日本人にとって最後の切り札になると思います。