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「為替介入の条件の目安」になりそうな動きはある
先週行われた日米財務相会談で、鈴木財務大臣によると、日本からは円安が急激であることを「数字をもって示した」と説明されていましたが、円安の相対的な悪影響の大きさを説明することは極めて重要なことでしょう。
たとえば、米ドル/円の5年MAかい離率が±20%以上に拡大したのは、1990年以降では4回ありましたが、そのうち3回では同かい離率が±20%以上に拡大する前から為替介入が始まりました(図表6参照)。
以上から考えられるのは、短期間で過去5年の平均値から2割近くもかい離する動きは、「急過ぎる相場の動きのけん制」、「ファンダメンタルズから著しくかい離した相場の是正」といった為替介入の条件の目安になりそうだということです。
足元の米ドル/円の5年MAは110円程度なので、それを2割上回る水準は132円程度といった計算になります。その意味では、130円に向かう米ドル高・円安は、為替介入の条件を満たす「短期間の一方的な動き」の可能性があるのではないでしょうか。
ただし、円安阻止介入の条件を満たしたということで、日米協調での介入が実現するかといえば、それは違うと思います。
たとえば、これまでのところで最後の為替介入になったのは2011年10月末に1米ドル=75円で米ドル安・円高に歯止めをかけた局面のものでしたが、ここでは日本単独での円高阻止介入に終始しました。なぜ日米協調介入とならなかったかといえば、米国の金融政策の影響が大きかったでしょう。
2011年当時、FRB(米連邦準備制度理事会)はまだリーマン・ショックからの景気回復を安定化させるべくQE(量的緩和)を行っていました。そういった金融政策と、円高阻止の米ドル買い介入は逆行するために協調しなかったというのが基本でしょう。
その観点からすると、現在FRBが金融引き締め局面にあるなかで、それと逆行する円安阻止のための米ドル売り介入の協調はよほどでなければやらないのではないでしょうか。
為替介入の効果の基本は、単独か協調かなどではなく、本格化、大規模化を可能にする持続可能性であり、その鍵が金融政策との整合性だと思います。
その意味では、今回の場合は、日銀が金融緩和を続けるなかではそれと逆行する円安阻止の円買い介入に自ずと制約がかかりそうなので、日銀の金融緩和を見直し、円買い介入と整合性をとれるようになるかが最大の焦点ということではないでしょうか。
吉田恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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