「ずっと“つつましい老夫婦”で通しています」
都内在住の野村和夫さん(70歳・仮名)と妻の聡子さん(68歳・仮名)は、退職金と長年の貯蓄、さらに保有する投資信託や定期預金などを合わせて、現在の金融資産は約1.2億円。加えて、自宅も完済済の持ち家で、年金収入は世帯で年間約430万円にのぼります。
それでも、2人の暮らしはとても質素です。
「外食は週に1〜2回。でも、行くのは大体、定食屋とかラーメン屋。夫婦で2,000円以内に収めています」
そう話すのは聡子さん。服も数年買い替えず、旅行は基本的に「日帰りか格安ツアー」。孫へのプレゼントも「学用品か図書カード」程度だといいます。
「“うちのばあばはケチ”って言われているかも。でも、お金って、出すときと出さないときを選ばないと」
夫の和夫さんは、会社勤めをしていたころの経験から、「資産があると分かった途端、人が変わることもある」と語ります。
「誰かに何か頼まれるとか、奢る流れになるとか、そういうのが面倒なんですよね。定年してからは、ずっと“つつましい老夫婦”で通しています」
実際、近所づきあいでも、資産の話は一切しないと決めているそうです。スーパーのチラシを確認して買い物に出かけ、地域の健康体操教室や図書館を利用する生活を「これが心地いいんです」と語ります。
1.2億円もの資産があれば、多少の旅行や贈り物に困ることはなさそうです。それでも「できるだけ切り崩さずにいきたい」と話す背景には、長生きリスクや医療・介護への不安があります。
聡子さんは、最近がんを経験した友人の話を聞いてから、急に医療費や民間介護サービスの費用が心配になったといいます。
「入院や通院で思った以上にお金がかかるって聞いて。これから年を重ねるほど、“もしも”が増えるでしょ?」
実際、内閣府『高齢社会白書(令和6年版)』では、75歳以上の医療費は1人あたり年間95.3万円、介護保険の給付費も年々増加傾向にあります。制度があるとはいえ、「自費でカバーする部分」が予想以上に大きい現実もあります。
厚生労働省『国民医療費(令和5年度)』によると、75歳以上の1人あたり医療費は年間約95.3万にのぼります。制度が整っているとはいえ、窓口負担や介護サービスの自己負担分など、“自費でカバーする部分”も少なくないのが実情です。
