3泊4日の「にぎやかな疲労」
都内のマンションで一人暮らしをしている川田志津子さん(66歳・仮名)は、月額約23万円の年金で暮らしています。配偶者は早くに他界し、生活はつつましいものの、年金だけでやりくりできているといいます。
毎年、お盆や年末には長男の家族4人(夫婦+小学生と保育園児の2人)が3泊4日で実家に滞在していました。久しぶりに会う孫たちは可愛く、「最初のうちは、帰ってくるのが楽しみだった」と志津子さんは話します。
「でもね、年々きつくなってきたの。買い物から掃除、食事の準備に洗濯まで、私ひとりでやるんだもの」
朝から夕食の支度、使った布団の片づけ、孫の遊び相手、さらに大量の洗濯。「疲れが3日残るようになった」と感じた頃から、「帰ってくれてホッとする」という気持ちが芽生えてきたといいます。
経済的な負担も、歓迎できなくなった理由の一つでした。帰省前に買い込む食材費、お菓子や飲み物、外食やレジャーの費用の一部も「自然とこちらが出す」流れになっていたといいます。
「2万も3万も減るわけじゃないけど、“今月ちょっと厳しいかも”ってなるの。老後は“予想外の出費”が一番こわいのよね」
志津子さんは、持病の治療で月に数千円の通院費がかかっており、光熱費や保険料、共益費なども含めると年金の多くが“決まった支出”に消えていく生活です。家族の帰省によって予期せぬ出費が増えることは、高齢者にとって心理的にも現実的にも大きな負担になります。
