(写真はイメージです/PIXTA)

ウクライナ侵攻を受けて、世界経済はどのように変化しているのでしょうか。IMF(国際通貨基金)が公表した世界経済見通しをもとに、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が解説します。

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    戦争以外のインフレ圧力として、IMFは、コロナ禍による供給制約や米英など一部の先進国での労働市場のひっ迫を挙げている。コロナ禍による供給制約はモノに偏っていた需要がサービス需要に回帰することで緩和するとしているが、中国のゼロコロナ政策は制約の長期化につながると指摘している。
     

    また、MFは見通しに対するリスクは大きく下方に傾いているとしており、以下をリスク要因として挙げている。

     

    具体的には、「戦争の悪化」(人道危機の拡大、制裁の強化など)「社会的緊張の増加」「コロナ禍の再燃」「中国経済減速の深刻化」「中期的なインフレ期待の上昇」(金融引き締めの積極化に関連)「金利上昇による財政負担の悪化」「地政学的環境の悪化」(デカップリング、ブロック化)「気候変動に関連した危機」の項目を挙げている。
     

    こうしたリスクを踏まえて、IMFは3種類の悲観シナリオを用意している。

     

    ①「ロシア産商品の供給急減」(ベースラインではロシア産エネルギーの急減は織り込んでいないが、石油・ガス輸出がベースライン対比で22年▲10%、23年▲20%と減少し、原油価格が22年で+10%、23年で+15%、金属価格が22年で+5%、23年で+7%、食料品価格が22年で+4%、23年で+6%、それぞれベースライン対比で上昇)、

    ②「①に加えインフレ期待が上昇」、

    ③「②に加え世界的な金融システムの緊張」


    である。

     

    悲観シナリオ③では、世界の実質GDPがベースライン対比で27年までの累計で15%ほど減少する。地域別にはEUの実質GDPは23年でベースライン比3%ほど下振れ、EUを除く先進国およびロシアの除く新興国・途上国が23年でそれぞれ1.5%ほど下振れるとしている。

     

    また、世界のインフレ率は22年および23年でそれぞれベースラインから1%ポイントほど上振れる。ただし、景気悪化がディスインフレ圧力を生み、24年以降はベースラインを下振れる結果となる[図表6]。

     

    [図表6]世界の実質GDP伸び率
    [図表6]世界の実質GDP伸び率


    最後に、今回の見通しでは特集として商品市場の動向と見通しにも触れている。

     

    今回の特集では、最近のエネルギー危機と関連して、化石燃料への投資撤退(ダインベストメント、divestment)が再生可能エネルギーの導入速度と比較して速すぎるのではないか、という論点が定量的に検証されている。

     

    結果として、炭素税といった需要政策(化石燃料への需要を減らす)がエネルギー価格の下落圧力を生む一方で、化石燃料生産への規制といった供給政策(化石燃料の供給を減らす)はエネルギー価格の上昇圧力となり、供給制約が将来のエネルギー価格に不確実性をもたらしている可能性があるとしている。

     

    そのため、化石燃料の消費国と生産国が強調して気候変動問題に取り組み、再生可能エネルギーの導入に見合った速度で化石燃料投資からの撤退をすることがエネルギー価格の上昇や変動幅の削減に寄与するとしている。

     

     

    高山 武士

    ニッセイ基礎研究所
     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年4月20日に公開したレポートを転載したものです。

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