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プラットフォームの責任は問われない理由
では、自由主義側はといえば、アメリカのグーグルやツイッター、フェイスブックなどが大きく成長しましたが、まったく政府から支援を受けていないわけではありません。
アメリカでも、インターネットの黎明期だった1990年代に米国通信品位法が作られました。通信品位法第230条は、IT企業やSNSなどのサービスメディアの発展促進を謳い、特にSNSなどのプラットフォーム運営企業は投稿される情報や表現についての責任を免除されました。既存の出版社も様々な情報や言論が掲載されるという点は同様ですが、掲載した情報には責任を取らなければなりません。内容によっては、情報の対象となった人や団体から訴えられてしまうことがあります。
ところが、たとえばフェイスブックやツイッターに誰がどのような書き込みをしても、フェイスブック社やツイッター社は責任を負わなくてよいという、法律の例外規定ができたのです。
この免責が引き起こしたのは、フェイクニュースの氾濫です。誤った情報が溢れかえっていても、責任を取る人がいないからです。これが顕著に現れたのが2020年のアメリカ大統領選挙でした。「トランプ陣営が勝っているはずなのに、バイデン陣営が不正をして多数の票を獲得している」という趣旨の誤った情報が氾濫した結果、最終的には選挙結果に不満を持つ人たちがアメリカ連邦議会議事堂を襲撃する事件に至りました。
産業の保護育成という面で見れば、中国もアメリカも、自分たちのプラットフォームを使うように仕向けていると言えますが、表現や言論の自由から見れば、両者ともに問題があります。中国は、政府が載せてよいもの・見てはいけないものを決め、統制しています。これは明らかに問題です。
アメリカは、それとは逆にプラットフォームビジネスを独占させることを意図して、免責特権を与えました。野放しにすることで歪な産業が育ったのです。
プラットフォームビジネスは出版や報道と同様に、言論や表現の自由のもと、編集権をもった運営者が情報の正誤について、責任をもって利用者に提供するのが本来の形です。まったくの虚偽情報が書き込まれ、他の人に悪影響を与えたのであれば、書き込んだユーザーだけでなくSNS事業者が訴訟の対象にならなければいけないのです。
日本は、アメリカと同じような形となっています。通称「プロバイダ責任制限法」と呼ばれる法律では、権利侵害や犯罪などユーザーによる違法な情報で損害賠償が発生した際、プロバイダが責任を取らなければならない場合の条件が列挙されています。何か事件があったとき、プロバイダの責任の有無から争わなければいけないし、情報そのものが法に触れない場合は各事業者の自主的な努力にのみ任されているのです。
連邦議会議事堂が襲撃されたことは、多くの自由主義国に衝撃を与えました。アメリカでは今後、現在のプラットフォーム企業に与えられている特権の見直しを行う議論が本格化していくと考えられます。
こうした議論は、アメリカやヨーロッパで進んでいます。アメリカ共和党からは、プラットフォーム企業も出版社のように編集権と責任を両方持たせることで、普通のメディアのようにしていくべきではないかという意見が出されています。ヨーロッパはまた別の議論を行っていて、これだけSNSが普及した現状でユーザーの書き込みを止めるのは難しいという前提に立っています。
このため、民主的に選ばれた代表者によって審査をする仕組みや手続きを作り、監督しようという意見があります。日本でいうと、放送に対して視聴者などからの問題の指摘に対応し、審査を行う第三者機関のBPO(放送倫理・番組向上機構)のようなもののSNS版を作ってはどうかということです。