ボロボロの工場のペンキ塗りから、再びの新商品開発へ…豆菓子店の社長と従業員が再起したワケ

ボロボロの工場のペンキ塗りから、再びの新商品開発へ…豆菓子店の社長と従業員が再起したワケ

主力商品だったバターピーナッツの製造をあきらめ、危機的状況に追い込まれていた豆菓子店の二代目社長。ストレスと寝不足で常にフラフラでしたが、ふとしたきっかけで生活習慣を変え、健康を取り戻していきます。気持ちの安定が従業員にも通じたのか、新しい提案を得ることに…。心機一転の機運が、会社内にも伝播していきました。

社長が体調不良では「健全経営」はムリ

散歩はとても効果があり、ぐっすりと眠れるようになりました。

 

実践してみて気づいたのは、そもそも寝不足の状態で戦おうとすることが無謀だということです。

 

調子が良い会社の社長は、もちろん心配ごとや不安なこともあるでしょうが、しっかり眠っています。眠っているから体調が良く、頭も冴えます。一方、寝不足の社長は頭がぼーっとしています。発想力、判断力、行動力などが一様に鈍っている状態で、体調良く仕事をしている社長を凌ぐ経営などできるはずがないのです。

 

成果の面でも、散歩は経営再生のアイデアを練る良い機会になりました。この時まで気にしていなかったのですが、工場の近隣には、多くの企業があり、倉庫もあります。住宅、アパート、商店もあります。素敵な庭の家を見つけ、「きれいな庭があると心が和むだろうな」と思いました。素敵な玄関ドアを見て、ドアの良し悪しがお客さんの印象を左右することに気づきました。

 

また、掃除、挨拶、笑顔の大切さを再認識したのも散歩のおかげです。調子が良さそうな会社は、どこもきれいに掃除しています。出入りしている従業員は元気があり、お互いに声を掛け合っていますし、通りすがりの私に気持ちよく挨拶してくれることもありました。

 

鄙事多能、バターピーナッツ工場を見に行った中国で、些細なことをきちんとできるかどうかが大事なのだと学んだことを思い出しました。

 

すでに工場ではペンキ塗りや掃除をしていましたが、きれいにするだけでなく、快適に働ける環境が大切なのです。そのために、掃除をさらに徹底し、挨拶や笑顔も奨励し始めました。掃除も挨拶も笑顔で接することも、今日から簡単にできます。自分と相手の気持ちが良くなりますし、コストもかかりません。

 

病は気からという言葉があるように、赤字が病だとすれば、それを治すためには気持ちが大事です。そう考えるようになって、私自身、経営課題にちょうど良い危機感と緊張感を持って向き合えるように変わっていったのです。

「社長、新しい豆菓子を作りましょう」

散歩を始めてから、私の気持ちは明るくなりました。すると、気分は周りにも伝播するようで、社内の雰囲気も前向きになっていきました。この変化が赤字脱却に向かう変化につながっていきます。指示通りにペンキを塗ったり掃除をしたりするだけだった従業員の中から、再出発に向けて積極的に取り組みたいと考える人が現れ始めたのです。

 

「社長、毎日ペンキ塗りばかりでは話になりません。新しい豆菓子を作りましょう」

 

そう提案してきたのは、バターピーナッツを担当していた工場の従業員でした。

 

「新商品か……」私は答えに詰まりました。良いアイデアだと思う一方、チョコ菓子の失敗をまだ引きずっていたのです。新商品開発よりも、焼カシューとタマゴボーロに専念したほうが良いのではないかと思いました。リソースを分散すると生産効率が下がることを、過去の失敗から学んでいたからです。しかし、従業員はやる気でした。

 

「空いている機械があるので、開発に使えます。必要な機械があれば、自分たちで改造して作ることもできます。やらせてください」

 

そこまで言われたら断れません。

 

「よし、やってみるか! 挑戦してみよう」

 

私はそう答えて、提案者である従業員を中心に新商品開発のチームを作りました。この時、バターピーナッツの設備を廃棄する前に感謝を込めてみんなできれいに分解清掃した経験が生きていたことが無性にうれしかったことを記憶しています。無駄なことなどなかったのだと思い、挑戦してみようと決めました。

 

少しずつですが赤字脱却に向けて動き出したことを感じ、私は「そうか、今がチャンスなのか」と思いました。この時まで、自分たちはピンチに陥っていると思っていました。主力商品がなくなり、売り上げが大幅に減っている状況に頭を抱えていたのです。

 

しかし、その認識が間違いであると気がつきました。今なら従業員の手も、機械も空いています。「新しい商品を作らなければならない」という危機感と使命感も高まっています。しかも、主力商品も売り上げもすでに失っているので、これ以上失うものもありません。

 

この状態こそ、新商品開発に取り組む絶好の機会です。経営が順調で、他の豆菓子の生産で忙しかったら、このような状態にはなりませんでした。だから、ピンチではなくチャンスです。事業モデルや商品構成を根本から再構築して、新たに生まれ変わるのであれば、今がそのタイミングであり、動き出す時だと分かったのです。

 

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小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

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