豆菓子店2代目社長が「中国製バターピーナッツ」に惨敗した日

北海道の豆菓子店を引き継いだ2代目社長は、早々に躓いてしまいます。大金をかけた商品開発は頓挫、そして「自社ショップ」の出店も失敗へ。しかしその先には、先代より大切に守ってきた主力商品事業の「大幅縮小」というさらなる試練が待っていました。

「消費者の声を聞く場がほしい」と自社ショップを…

2つ目の失敗は、1988年に作った自社ショップ「ショップめんこい」です。チョコ菓子と同様に、自社ショップを持つことも菓子メーカーの憧れです。自社の自信ある商品を、自分たちの店で、自社ブランドとして売り出すことができたらどれだけ幸せかと考えて、当社初となる小売店を札幌駅の近くに新たにオープンした商業施設に開いたのです。

 

憧れや願望といった感情的な理由だけでなく、自社ショップを持つ論理的な理由もありました。私たちは飲食店や問屋向けに売るB to B事業です。例えば、問屋から「バターピーナッツを何キロ」という注文を受けて、注文通りに作り、納品します。

 

事業としてはそこで完結しますので、商品を納めた後はその商品が、どこで、どんなふうに流通しているのかは分かりません。社名が表に出ることもなく、消費者の感想も分かりません。この状況を変えたいと考えました。

 

消費者との距離を縮めれば、感想をもらうことができます。「味が薄い」「味のバリエーションが欲しい」といった改善点や「小サイズのものが欲しい」といったニーズが獲得できます。消費者の声に耳を傾け、ニーズを満たす商品を作ることは、今後の成長につながるはずです。そのためには消費者と接点を持つことができる物理的な場が必要でした。そう考えて、自社ショップを出店し、小売り事業をスタートすることにしたのです。

 

しかし、失敗に終わりました。消費者の声を聞き、その声を商品の改善や開発に生かすためには、店にお客さんが来てくれることが大前提です。しかし、私の会社にはお客さんを呼ぶだけの力ある商品が揃っていませんでした。

 

また、店舗運営のノウハウもなく、直営店といってもそもそも会社の知名度がない状態だったため、肝心のお客さんを店に呼び込むことができなかったのです。

安易な挑戦で「リソースが分散」

経営者として打った手がことごとく失敗し、私は落ち込みました。一方で、学びもありました。それは、手を広げることが正しいとは限らないということです。

 

私はこの時に、安易に新しいことに手を出してはいけないことの大事さを身をもって理解したのです。中小企業は、ヒト、もの、カネといったリソースが不足しているところが大きな弱点です。この弱点を克服するためには、限られたリソースを集中し、効率よくものづくりすることが大事です。

 

私が取り組んだ新商品開発と小売事業への進出は、まったく逆の取り組みです。新商品開発を掲げることで、本来であれば集中しなければならない工場の労働力が分散しました。小売り事業も同様、ヒトとカネを分散させることになりました。

 

挑戦することは大事です。しかし、リソースに限界がある以上、挑戦するよりも前に、何に挑戦するか、その結果としてリソースがどうなるかをきちんと吟味しなければならなかったのです。

 

主力の商品や事業が一つだけでは危険ですが、多ければ良いというわけでもありません。商品構成の面では、バターピーナッツ、焼カシュー、タマゴボーロという3つくらいがちょうどよく、4つ目、5つ目の商品は不要でした。

 

商品の横展開より深堀する大切さを学びました。事業についても、この時点ではまだ、小売り事業に手を出すより、生産体制を固め、生産効率を高めることを優先するのが正解だったのです。

 

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    池田食品株式会社 代表取締役社長

    1949年北海道生まれ。
    明治大学卒業後に東京・大阪でのサラリーマン生活を経て、池田食品株式会社に入社、1984年に二代目の同社代表取締役社長に就任。
    北海道ローカルであることを強みに、時代や流行に媚びることなくおいしさを届ける、これを信条とし、売上は年々向上している。
    毎年開催する節分のイベントでは1万人集客するなど、地元から愛されている。

    著者紹介

    連載成長を続ける「豆菓子店」のスゴいレジリエンス経営

    小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

    小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

    池田 光司

    詩想社

    価格競争や人材不足、災害やコロナ禍のような外部環境の変化によって多くの中小企業が苦境に立たされています。 創業74年を迎える老舗豆菓子メーカーの池田食品も例外ではなく、何度も経営の危機に直面しました。中国からの…

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