北海道の豆菓子店2代目社長、チョコ菓子・甘納豆の製造販売がとん挫した「振り返れば当然の事情」

タマゴボーロ製造の承継を経て、さらなる新商品の開発に奔走する、豆菓子店2代目経営者。菓子メーカーならどこもが憧れる「ヒット商品のチョコレート菓子」開発を目指し、新設備導入を決断します。しかし、製造技術の未熟さや立ちはだかる競合他社など問題は山積し、あきらめる結果に。一方、甘納豆は上々の出来でしたが、こちらはストックと販路の開拓が難しく…。

チョコ菓子への参入に意欲、設備投資を行うが…

社長になり、毎日が目まぐるしく過ぎていきました。朝夕は豆菓子とタマゴボーロの工場に足を運び、現場の様子を確認しつつ、品質管理の策を練ります。日中は取引先を回って営業を行い、定時になったら自宅で今後の経営戦略を練ります。依然として青年会議所の集まりで出かける日々もありました。

 

中小企業は経営者があらゆる意思決定をします。業績を伸ばし、利益を増やしていかなければなりませんし、判断を誤れば会社の未来が閉ざされる可能性があります。

 

そのようなプレッシャーから逃れるために、あえて用事を増やし、忙しくしていたのかもしれません。これが失敗を生む原因になりました。

 

忙しくなるほど一つひとつの判断について深く考察できなくなります。プレッシャーと焦りが判断力を鈍らせます。結果、私は立て続けに2つの失敗をします。1つ目は、新商品開発で、2つ目は、自社ショップの出店です。

 

新商品開発を考えたのは、経営者になってすぐのことです。理由は、バターピーナッツの低価格化により、売り上げの減少に歯止めがかからなかったためです。バターピーナッツのほか、焼カシューとタマゴボーロという商品がありますが、これらもいまいち伸びません。「武器は多いほうがいい」「種まきしておけば、いずれ実がなる可能性がある」そう考え、私は第4、第5の矢を作ろうと考えたのです。

 

まず検討したのはチョコレート菓子の開発です。手持ちの豆菓子作りのノウハウを生かして、アーモンドチョコレートのようなヒット商品が作れるのではないかと考えました。

 

チョコレートは菓子の王様です。子どもたちが最も喜ぶ菓子ですし、菓子メーカーにとってもチョコ菓子のヒット商品を持つことは大きな憧れで、「いつかチョコ菓子を作りたい」という話は、父が存命の時からありました。

 

着手のタイミングとしては決して悪くありません。当時、バターピーナッツの注文が減っていたため、工場の労力に多少の余裕がありました。チョコ菓子の生産には新たな設備が必要ですが、バターピーナッツが完全に売れなくなってからでは投資できません。取り掛かるなら今しかない、そう決めて、さっそく機械を発注しました。

 

それから数カ月かけて開発に取り組みましたが、当然ながら簡単ではありません。豆菓子もチョコ菓子も大きな分類としては菓子ですが、作り方は全く異なります。ノウハウを貯めるだけでも時間がかかりますが、試作品をいろいろと作ってみたら、どれもある程度消費者に受けるような商品にはなりました。

 

しかし、出来上がった製品の保管や配送には低温管理が必要でした。温度帯の異なる商品は社員の管理負担が大きく、間違いが起きそうでした。さらに多くの菓子メーカーが憧れるチョコ菓子の世界は、競合がたくさんいます。ヒット商品を作るためには、この激戦区を勝ち残らなければなりません。

 

開発に取り掛かっていく中で、本州のチョコ菓子メーカーが強い理由が分かりました。大手メーカーは、経験豊富な職人の知恵と多額の開発費を持っています。地方の中小企業とは体力差が歴然で、憧れだけで参入できる分野ではなかったのです。要するに失敗でした。

 

結局、チョコ菓子の開発は早々に諦めて、設備はほとんど処分しました。一部の機械だけは残し、それはチョコのコーティングで使うとともに、この時の失敗の戒めにもなっています。

甘納豆、試作品は上出来でも「コストと販路」でとん挫

チョコ菓子とほぼ並行して、例えば甘納豆にも取り掛かってみました。甘納豆は豆菓子ですので、チョコ菓子と違ってノウハウがあります。追加の設備もほとんどいりませんし、工程もそれほど難しくありません。

 

試作品はすぐにできました。味も食感も上々です。しかし、一つ問題がありました。それは、現在扱う豆菓子と違って日持ちしないため、作り置きができないことです。

 

実はここでも同じ間違いを再び起こします。生産効率を考えると、バターピーナッツのように大量に作ってストックしておき、注文が入った時に売るのが理想です。しかし、甘納豆はそれができません。注文先も数が少ないため、注文を受けた時に少量だけ作らなければならず、非常に効率が悪いのです。

 

注文数が増えれば、一度に大量に作れるようになります。しかし、チョコ菓子のように万人受けする商品ではありませんので、その可能性は見込めません。道外まで販路を広げれば注文数が増えますが、日持ちしないため遠くへは運べませんし、そもそも道外の販路を開拓する営業力がありません。

 

結局、これも失敗に終わりました。温度帯の異なる商品は管理が難しく、社員に負担がかかるのです。チョコ菓子のようなメジャーな商品は難しく、かといって甘納豆のようにニッチ過ぎる商品も難しく、新商品開発の難しさを痛感しました。

 

言い換えれば、バターピーナッツは市場規模も競合やニーズの環境も極めて良い商品だったということです。

 

この失敗を経て、私は改めてバターピーナッツに目をつけた父を尊敬しました。ものづくりは「何を作るか」だけ考えていても事業になりません。誰に、どうやって売るかまできちんと設計しなければならないのです。この時の経験が現在まで豆を愛し、進化する豆商品創りにまい進させることにつながったと思います。

 

 

池田 光司

池田食品株式会社 代表取締役社長

 

 

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池田食品株式会社 代表取締役社長

1949年北海道生まれ。
明治大学卒業後に東京・大阪でのサラリーマン生活を経て、池田食品株式会社に入社、1984年に二代目の同社代表取締役社長に就任。
北海道ローカルであることを強みに、時代や流行に媚びることなくおいしさを届ける、これを信条とし、売上は年々向上している。
毎年開催する節分のイベントでは1万人集客するなど、地元から愛されている。

著者紹介

連載成長を続ける「豆菓子店」のスゴいレジリエンス経営

小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

池田 光司

詩想社

価格競争や人材不足、災害やコロナ禍のような外部環境の変化によって多くの中小企業が苦境に立たされています。 創業74年を迎える老舗豆菓子メーカーの池田食品も例外ではなく、何度も経営の危機に直面しました。中国からの…

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