不幸せを探して不幸自慢をするのをやめた…。感謝の心が育つと自然とすべてをよい方向に結びつけられます。いったい経営者は何が変わったのでしょうか。飯田屋6代目店主が著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)で解説します。

商売の前に「奉仕の心をもつよき人間であれ」

■真の商人道に徹し、奉仕の精神貫く

 

祖父は「真の商人道に徹し、奉仕の精神貫く」という言葉を遺しました。

 

商人道とは奉仕の道であるというのです。祖父から「よき商人である前に、奉仕の心を持つよき人間であれ」と言われているようです。

 

こっちのほうが儲かるのではないか、このほうが豊かになれるのではないかと、フラフラするのではなく、ただ目の前のことに己を尽くすのが商人道なのでしょう。

 

とても高い壁で、とても難しく、自らを律していかなければ、己を尽くせません。途中で楽な道へと逃げ出してしまうかもしれません。

 

人生をかけなければ達成できない究極の宿題を、祖父から出されたような気がします。なんてありがたいことなのでしょうか。

 

自分のやりたいこと、やるべきことに迷うのは地獄の苦しみです。祖父は、人間道を極めていくことが商人道に通じると教えてくれました。商人として成長するには、人として成長することなくしては成し遂げられないのだ、と。

 

過去に僕は、商売とは他店との勝負であり、お客様との勝負であり、世間との勝負だと捉えていました。勝負であるからこそ勝ちがあり、負けがあると思っていました。

 

しかし、商売にほかの人との勝負はありません。あるとすれば自分との勝負だけです。今日を誠実に商いができたかどうか、奉仕の心を自分の真ん中に置けていたかどうかだけなのです。

 

結局、商売は自分が儲けるためにあるのではなく、お客様に儲けていただくためにあるのだと思います。飯田屋の場合、料理道具を知り、買物をしていただき、使って満足していただき、生活を豊かで幸せなものにしていただくお手伝いを続けていくためにあります。

 

そこに勝ち負けはありません。商人道とはとてもシンプルで、長い道のりです。人生が終わるその日まで学び、実践を続ける覚悟です。

 

だから、僕は他人と争うことをやめました。

 

ああ、ありがたい。

 

すべてすべてに、ありがとうございます。(了)

 

飯田 結太
飯田屋 6代目店主

 

 

※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

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