興味を惹きつけるPOPや、声をかけていただきやすいスタッフの雰囲気づくりに力を注ぐ。

料理道具専門店の飯田屋の店内のごちゃごちゃ具合は、駄菓子屋さんの陳列を参考にしています。「買い物がしやすい店」と「買い物がしにくい店」の決定的な違いは何でしょうか。飯田屋6代目店主が著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)で明かします。

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幼いころから駄菓子屋さんが大好きだった

どこに何があるのか一目でわかり、すっきりと整った店内に売れ筋商品が手を伸ばしやすく配置され、欲しいものがすぐに見つかることは、買物がしやすい店の条件といわれます。

 

でも、買物のしやすさとは本当にそれだけなのでしょうか。

 

それだけが条件ならば、飯田屋はかなり買物しにくい店でしょう。店内には所狭しと料理道具が並び、お客様に教えてあげたいと思う道具を知るたびに在庫数はどんどんと増えていきます。店の面積には限りがあるので、通路の幅がどんどん狭まっていきます。

 

買物に効率を求めるお客様と、買物に満足感を求めるお客様は、そもそも別のところに存在するのではないでしょうか。

 

買物がしやすいかどうかは、そのときに抱いている自分のニーズがどう満たされるかによります。どれでもいいから気軽にフライパンを買いたいというニーズならば、飯田屋は「買物しにくい店」となります。

 

一方、プロの道具屋の話をじっくり聞いてフライパンを選びたい人にとって、飯田屋は世界でもトップクラスの「買物がしやすい店」となります。このように、買物のしやすさはお客様のそのときの状況で変わるので、あまり追求しても意味がありません。

 

それよりも、お客様にワクワクする気持ちを感じてもらうことが重要です。どこに何があるのか一目ではわからず、まるで宝物探しをしているかのような店内。欲しいものを探していたはずが、別のものに思わず気をとられてしまうひととき。そんなワクワク感こそ大切です。

 

僕は幼いころから駄菓子屋さんが大好きでした。狭くてゴチャゴチャしていて、人との距離感が近い売場。欲しい商品は店主に声をかけないと手が届かない場所にあったりして「おばちゃん、あれちょうだい」なんて言葉を交わしたり……。大人になって手が届かないような品物は少なくなりましたが、今でも駄菓子屋さんに行くと子どものころと同じようにワクワクするのです。

 

駄菓子を買うだけなら、最近では近所のコンビニでも買えますが、僕は買いたいと思いません。駄菓子屋さんのゴチャゴチャしていて、すっきりとはほど遠いけれどワクワクするあの空間の中で買いたいのです。

 

次ページ理想的な「買物のしやすい店」とは

※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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