【関連記事】「ピザじゃない、ピッツァだ!」手書きPOPで売り上げ4倍に
幼いころから駄菓子屋さんが大好きだった
どこに何があるのか一目でわかり、すっきりと整った店内に売れ筋商品が手を伸ばしやすく配置され、欲しいものがすぐに見つかることは、買物がしやすい店の条件といわれます。
でも、買物のしやすさとは本当にそれだけなのでしょうか。
それだけが条件ならば、飯田屋はかなり買物しにくい店でしょう。店内には所狭しと料理道具が並び、お客様に教えてあげたいと思う道具を知るたびに在庫数はどんどんと増えていきます。店の面積には限りがあるので、通路の幅がどんどん狭まっていきます。
買物に効率を求めるお客様と、買物に満足感を求めるお客様は、そもそも別のところに存在するのではないでしょうか。
買物がしやすいかどうかは、そのときに抱いている自分のニーズがどう満たされるかによります。どれでもいいから気軽にフライパンを買いたいというニーズならば、飯田屋は「買物しにくい店」となります。
一方、プロの道具屋の話をじっくり聞いてフライパンを選びたい人にとって、飯田屋は世界でもトップクラスの「買物がしやすい店」となります。このように、買物のしやすさはお客様のそのときの状況で変わるので、あまり追求しても意味がありません。
それよりも、お客様にワクワクする気持ちを感じてもらうことが重要です。どこに何があるのか一目ではわからず、まるで宝物探しをしているかのような店内。欲しいものを探していたはずが、別のものに思わず気をとられてしまうひととき。そんなワクワク感こそ大切です。
僕は幼いころから駄菓子屋さんが大好きでした。狭くてゴチャゴチャしていて、人との距離感が近い売場。欲しい商品は店主に声をかけないと手が届かない場所にあったりして「おばちゃん、あれちょうだい」なんて言葉を交わしたり……。大人になって手が届かないような品物は少なくなりましたが、今でも駄菓子屋さんに行くと子どものころと同じようにワクワクするのです。
駄菓子を買うだけなら、最近では近所のコンビニでも買えますが、僕は買いたいと思いません。駄菓子屋さんのゴチャゴチャしていて、すっきりとはほど遠いけれどワクワクするあの空間の中で買いたいのです。