ロシアのウクライナ侵攻でルーブルが大暴落をしています。各国の経済制裁が原因ですが、実は日本円も「暴落」しています。輸出主導の国は製品が安く売れるので円安がいいと考えられると思いますが、本当にそうでしょうか。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

日本の消費税がアップする根本原因

■消費税(間接税)の特徴

 

繰り返しますが、景気が悪くなると税収は減ります。

 

一方、家計は、例えば子供たちも食べさせないといけないし、最低限動かさないといけないことがいくつもあります。したがって不況になっても、家計の支出は大きく変わりません。そのため消費税の税収はそれほど減りません。つまり所得税や法人税は景気の良し悪しで乱高下がありますが、消費税はあまりない。

 

これが財務官僚としてはしめしめなのです。いちばん見通しが立ちますので。だから政治家に対しても、盛んに「消費税の税率を上げたら、確実に財政収支の悪化を防げる」「社会保障費になる」と甘い囁きをする。

 

そもそも消費税や付加価値税の発想はフランスから出ています。

 

絶対君主ルイ14世の時代はブルボン王朝のピークでした。そのとき、コルベールというやり手の財務大臣がいました。この人が徴税の「極意とは」ということで、こんなことを言っています。

 

「ガチョウから羽を取る際、一気にむしり取ってはいけない。適度に抜けば、ガチョウは暴れもしない。黙っている。むしろ満足した顔をしている。これが徴税の極意だ」と。

 

こういう考え方が脈々と繫がって、現代の付加価値税(消費税)に至っているわけです。次のルイ15世のときには空気税を取ろうとしました。「お前はここの国の空気を吸ってるんだから、税金を払え」というわけですが、消費税も「お前はこの国で食べたり飲んだり、買い物をするのだから税を払え」ということで、同じ言いがかりのようですね。

 

さて、一方で消費税を上げる代わりに、所得税や法人税、ほかの税金を下げるという発想は財務省にはないのかと、思われるかもしれません。実際、アベノミクスで法人税減税をやりましたが、これは経団連と取引したのです。「消費税を上げることに賛成すれば、法人税を下げてやる」と。

 

じつはそこにはもうひとつ約束があり、「法人税率を下げるなら、企業は国内投資を増やす」はずだったのに、実際にはほとんど国内投資は増えていません。こんな噓つきはダメです。道義というものがあります。いみじくも「国内投資を前年比で10%増やす」と約束したのだから、それは守りなさいよと言いたい。

 

ある種の倫理観や「国民経済をよくしないといけない」という国家観は、財界にはないということでしょう。国民経済がいいからこそ、企業(その大小は問わず)の経営は成り立つわけです。だからきちんと貢献しないといけないと思います。

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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