アベノミクスでは「雇用が増えましたよ」というのが当時の安倍首相の自慢でした。しかし増えたのはパートなどの非正規雇用でした。しかも、平均給料は下がり続けました。なぜ日本人の給料は上がらないのでしょうか。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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アベノミクスでは「雇用増加」が自慢だったが

■デフレとは?

 

デフレという言葉はよく目にすると思いますが、デフレーションの略語で、デフレーションは『広辞苑』で〈(通貨収縮の意)物価が持続的に下落すること。企業の倒産、失業者の増大など不況や社会不安を伴うことが多い。〉と記されています。

 

長引くデフレで日本経済は失われた25年に陥っていると言われますが、デフレはすべて「悪」なのでしょうか? もしデフレになって物価が下がっても、賃金が下がらない、あるいは上がれば問題ないでしょう。

 

例えば19世紀半ば、アメリカのカリフォルニアでゴールドラッシュが起きました。当時は金がそのまま通貨にもなった金本位の時代です。金の生産量がガーンと増えたためデフレになりました。では経済がダメになったかというと、決してそんなことはありませんでした。

 

世界中から探鉱者がカリフォルニアに殺到したため、食料、物資、住居の需要は拡大しましたし、投資も盛んになりました。経済は成長しているわけです。そういう環境下でのデフレ=物価が下がるのはいいことです。デフレになっても賃金は上がるし、いろんなビジネスの機会がある。経済は成長している。これは問題ありません。つまりデフレは悪だと短絡的に考えるのではなく、経済成長ということと関連づけて考えないといけない。

 

ただ金の採掘量が一気に増えたというのは、例外的な話でしょう。本来のデフレは、需要が供給に対して不足することで起きます。

 

需要不足で物価が下がる、あるいは売り上げが下がると、すべてが萎縮してしまうので、新しい雇用も、投資も生まれにくくなります。それから売り上げが下がるということで、市場のパイが小さくなっているわけですから、企業は人のクビを切れないなら賃金を下げます。あるいは正社員採用はやめて、人件費の安い非正規社員採用のほうへシフトするわけです。

 

そうなると平均賃金がガーッと下がっていきます。例えば物価が1くらい下がったとしても、賃金は5くらい下がってしまう。実際に統計データを見るとそれくらいの下がり方をしています。

 

日本のデフレ=慢性デフレの恐ろしさは、物価は決して急激に下がっているわけじゃないのに、賃金のほうがはるかに下げ幅の大きいところにあります。その影響を受けて雇用の構造が変わっていきます。即ち正社員の比率が落ち、非正規が増えるということです。

 

アベノミクスでは「雇用が増えましたよ」というのが安倍晋三さんの自慢でした。しかし増えたのはパートなどの非正規雇用でした。それから高齢者の再雇用です。60歳を過ぎて再雇用されると、賃金が極端に下がりますから。

 

「雇用が増えた」のは確かにアベノミクスの功績です。しかし、平均賃金は下がったまま、むしろ下がり続けています。これが定年後の人たちだからある程度は仕方ないというのは理解できます。しかしながら、こういう就業構造のもとでは若い人の賃金まで下がっていくのです。

 

例外はありますが、やはりデフレは良いことではありません。

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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