25年間の慢性デフレの正体…誰が日本の経済成長を止めたのか

日本では1990年代後半から25年間も慢性デフレが続いていますが、それが放置されたままになっています。経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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経済を成長させられない政権は失格

■経済で政治の役割は重要

 

世の中には、元手があるために株で儲けて、節税に励んで、美味しいものを食べて、ぬくぬくと暮らせる既得権益者がいます。この人たちが悪いわけではありません。こういう人たちを責めても仕方がないです。

 

一方でいまから頑張ろうとしている人たちには希望がなくてはいけません。じつは政治の要諦はそこにあります。チャレンジができるような社会基盤をつくること。これは経済を大きくさせることです。即ち経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です。

 

それを前提とすると、日本の政権はここ30年間、ずっと失格だった。その間の平均経済成長率を見ると、0.7%です。「アベノミクスは成功だ」と言う人もいますが、アベノミクスの7年間は「ちょっとまし」という程度で、世界標準で見ると全然ダメです。最初の年である2013年度が最も高く、2.7%。加えて世界標準はどうしてもドル建てになるから、円安だと日本にとっては分が悪い。

 

ドルが世界の標準通貨で、各国通貨の尺度であり、価値を決めるのです。つまり、その通貨がドルにどれだけ交換できるかに尽きるわけです。ドルに交換して、換算した日本の名目GDPは、1995年が5.5兆ドルくらいでした。それで2020年は五兆ドルに満たないくらいです。25年かけてこんなに減っているということは、国力がそれだけ衰退しているということです。

 

■経済で政府のやるべきこと

 

財務というのは資産の部と負債の部があり、このふたつはバランスします。即ち、資産のほうを増やそうと思えば、負債のほうも同時に増えるのです。政府や企業、家計といった組織内の問題になりますが、負債を増やして資産を増やしても、その資産が全然利益を生まなかったらとんでもないことになります。こうなると、家計も企業も、借金を恐れて負債を増やそうとしません。

 

これを前提に国家の経済を考えていくと、単一のセクター、つまり政府や企業、家計での資産と負債のバランスを考えても仕方なく、国家全体として考える必要があります。ここで政府も緊縮財政をやるということであれば、資産は絶対減ります。厳しいときに借金を増やして、資産を増やせるセクターは政府しかありません。家計や企業はみんな恐れてしまい、もう借金なんてとんでもないということになりますから。

 

一方、政府が堂々と負債を増やして、資産をきちんと増やすことは大事なのですが、その資産がいつも赤字を生むというか、収益を生まないと、いつか破綻します。だから政府はワイズ・スペンディング、要するに賢い支出をしないといけません。

 

しかし、政府のやる投資、つまり資産を増やすのは借金が前提です。これは何十年もかけて次の世代に向けてのさまざまな教育、それからインフラの整備も該当します。それと技術開発、とくに基礎研究です。これらはすぐに収益に繫がるものではありません。こういうことこそ政府がやる。

 

残念ながらこれらのことをどんどん切ってきたのが緊縮財政です。経済学的に考えても、非常に理屈に合わない話です。

 

なぜ日本政府も財務省もこんな考え方をするのかというと、日本にはまとまった国家としての経済政策のあり方、国家全体を考えた場合にどうすべきかという、その考え方がないからです。財務省は自省にとっての財政政策を考えていて、国家のための財政政策を考えているわけではないのです。国益よりも省益を追求している。

 

財務省では増税して成功すれば、必ず後世まで褒め称えられます。さらに財政赤字を減らして均衡化させると、財務官僚としては大きな功績です。だからどうしても財務官僚は皆それらの追求に走ってしまう。

 

よく言われることですが、結局、官僚は出世が第一です。出世するためには、やはり自分のいる官庁での評価が高まらないといけません。そういうなかで、「減税すべきだ」「歳出を増やすべきだ」と主張する官僚が財務省にいたら、まず出世できません。「お前、何言ってるんだ」となって。

 

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産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

著者紹介

連載日本人の給料が25年間上がらない残念な理由

本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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