【関連記事】東京都で「最も医師が多い」のは何区?ひっ迫する現場のリアル
1年で10件以上も「医療過誤」発生…一体なぜなのか
検査結果を見落とし、その結果患者さんが死亡した、最近、テレビ、新聞でそんな報道がありました。大学病院でのことです。依頼したCT検査で、読影の専門医である放射線科専門医ががんの存在を指摘していたにも拘わらず、主治医がその記載を見落とし、 その結果患者さんが死亡された、そんなニュースです。
そんな医療過誤が3年間で30件以上もあったということで、1年で10件以上見落とされていることになります。
診察を受けるなら田舎の小さな病院より大きな病院の方がいい。中でも「大学病院だから間違いないだろう。大学病院なら専門医が揃っているから心配ない」。少し思わしくない病になられた時、患者さんはそう思いがちです。今回の件はそんな専門性重視から生じた悲劇のように思います。
検査を依頼した医師は自分の診ている疾患についての記載を見ただけで、その他の記載に気づかなかった。読影を担当した放射線科専門医は読影する件数が多すぎて報告書の記載がどうしても遅くなってしまう。そのため主治医は自分で画像を見て、放射線科専門医の報告書をあまり読まないなどの問題が提起されています。
診療に訪れる患者さんは一人の人間です。心臓だけの人間、肺だけの人間、 腎臓だけの人間ではありません。ですから心臓だけ診る、肺だけ診る、腎臓だけ診るのでは間違いです。その方の全てをくまなく診て治療を考えることが大切です。
かかりつけ医からの紹介で受診、糖尿病の82歳Sさん
82歳のSさんが糖尿病の悪化でかかりつけ医から紹介されて受診されました。血糖値が500以上もありました。のんびり屋のSさん、自覚症状はあまりありません。ところが初診時の画像検査で左の腎臓に異常が見つかりました。腎臓がんを疑い検査を進めた結果やはりがんでした。血糖をコントロールした後Sさんは手術を受けられることになりました。
著者は腎臓の専門医ではありません。また放射線科専門医でもありません。ただ目の前の患者さんの特定の臓器を診るのではなく、全て含めて診察するようにしています。また得られた画像を必ず細かく見るようにし、機会があれば何度も見直すようにしています。
そんな中で、肺炎の方に使用した抗生剤の影響で胆囊内に特殊な変化が生じることに気づき、まとめて研修医に論文を書かせました。これも肺だけを診ていたのでは気づくことのない変化です。特定の分野に詳しい専門医は重要です。でも心臓はうまく動いているが、他の肺や腎臓あるいは肝臓がだめになったのでは治療も意味がありません。
専門の疾患を診ながら身体の全てが円滑に回るように配慮していく、それが専門医でしょう。患者さんは社会生活復帰のために専門医を訪れるのですから。
--------------------------------------------
髙山 哲夫
国民健康保険坂下病院名誉院長
1945年 松本市で生誕
1970年 名古屋市医学部卒業
1985年 国民健康保険坂下病院院長
2013年 国民健康保険坂下病院名誉院長
2006年4月より「社会保険旬報」に「随想―視診・聴診」を連載
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】