(※写真はイメージです/PIXTA)

後継者不足から中小企業の休廃業が急増しています。中小企業家同友会のなかでも事業承継は大きな問題となっています。中小企業経営者はどのように後継者を育成しているのでしょうか。地方の中小企業の取り組みを、清丸惠三郎氏がレポートします。

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中小企業の休廃業件数が右肩上がり

「廃業する(中小の)会社のおよそ5割が経常黒字という異様な状況だ」

 

日本経済新聞の記事中にある一節である。『中小企業白書2018年版』によると、企業の倒産件数は緩やかながら景気拡大もあって、08年の1万5646件から17年の8405件へとほぼ半減している一方で、09年から14年までの5年間で小規模企業の総数は41万者(社)も減少、また休廃業・解散件数は09年以降、17年の2万8142件までほぼ右肩上がりで増加している。

 

地域の人たちの生活や地域経済を担う中小企業、日本の製造業を支える基盤技術を有する中小メーカーが社会に必要とされていながら消滅していくことは、国家レベルでの大きな問題だと言っていい。「中小企業こそ日本経済の真の担い手であり、国民生活、地域社会、文化を支え豊かな国づくりの柱」(『同友会運動の発展のために』)と位置づける中小企業家同友会にとっても、自らの基盤を崩される危機だ。

 

それにしても、黒字でありながらなぜ多くの中小企業は休廃業、あるいは解散してしまうのだろうか。少し古いデータだが『中小企業白書2014』によると、小規模事業者のうち4割は「事業を何らかの形で他者に引継ぎたい」と考えており、「自分の代で廃業することもやむを得ない」と考えている経営者でも、およそ3割は事業承継を検討した経験があると答えている。つまり、多くの中小企業経営者は何とか自社を残したいと考えているのだ。

 

彼らになぜ事業承継がうまくいかなかったかを尋ねると、「将来の事業低迷が予測され、事業承継に消極的」との回答が最も多く、次いで「後継者を探したが、適当な人が見つからなかった」だった。

 

白書はそうしたことから、廃業の主因が「(経営者が)事業の将来に明るい見通しを持てなかった」ことにあるとしながらも、「事業承継の課題としては後継者不足があげられることが多い」と説明する。実はここ10年間で中小企業経営者の平均年齢が60代後半へと10歳余り高齢化しているという。それやこれや考えると、中小企業にとり後継者問題への対応は急務なのである。

 

こうした中小企業経営者を囲む極めて難しい状況を打破するために動き出している組織の一つが福岡県中小企業家同友会である。きっかけを作ったのは、「金融アセスメント法」制定運動の中心となった中村高明紀之国屋社長(現・会長)。中村氏は2011年に二度目の福岡同友会代表理事に選出されるのだが、選任に際して2つの問題意識を有していた。中村氏が語る。

 

「一つは高齢のベテラン経営者の中で、同友会内で知人も少なくなったのでもう辞めるという人が目立って多くなってきた。彼らがいなくなると、経営に関する貴重な体験談を活かすことができなくなり、若い会員や同友会にとり大きな損失になる。これを何とかしたいと考えたのです」

 

もう一つは、冒頭に記したことと同じで、中小企業の休廃業を何とか食い止めたいということだった。「中小企業がどんどん減っていくと、地域の雇用の受け皿が失われていくと同時に、固有の事業基盤やノウハウが失われ、地域のみならず日本経済の大きな損失につながります」と中村氏は説明する。

 

次ページ娘婿を後継者に決めるプロセス

※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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