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全国5万人会員を目指す中小企業家同友会
■9年連続で増加、会員5万人体制へ
「(東京で)日本中小企業家同友会ができて60年が過ぎ、全国協議会ができて50年目。この大きな時代の節目に、われわれはこの運動の歴史と理念を学び深め、継承することが重要です」
「ここで半世紀の運動の成果を確認します。企業づくりでは、労使見解を学びの柱に据えた経営指針の成文化と実践運動です。強靭な企業づくりの輪が広がっています。全会員でこの運動に取り組みましょう。地域づくりでは、中小企業憲章が閣議決定され、『中小企業振興基本条例』はここ数年、年間50を超す自治体で条例化され、昨年だけを見ると70自治体を超しました。私たちの運動は、国を動かし地域を変えようとしているのです」
「同友会づくりでは9年連続過去最高会勢を達成しました。来年度中には、全国5万名会員を目指しています。同友会は、社会への影響力が高まるといわれる対企業組織率10%を展望しています。5万名会員達成はその一里塚で、われわれの対企業組織率はわずか3%にすぎません」
2018年夏の猛暑がスタートする直前、全国的には梅雨前線と台風7号の影響で雨模様が続いていた7月5、6日の両日、仙台市内のホテルで、中小企業家同友会全国協議会(中同協)の第50回定時総会が、全国から1312人の参加者を集めて開かれた。今回のテーマは「同友会らしい企業づくりの輪を広げ、日本と地域の未来を拓こう」であった。
冒頭の言葉は、2日目の全体会開会に際して、中同協の中山英敬幹事長(福岡同友会相談役理事)が行った挨拶の概略である。
中山氏は企業内ベンチャーとして自らが立ち上げたコールセンター事業が会社側の意向で閉鎖されることになった際、当該事業の可能性を確信して1998年に福岡市で独立創業、その会社ヒューマンライフを現在の従業員数約160人、年商6億円超の会社に育て上げた手腕家である。最近、コールセンター事業の収益性が下がってきたことから、自社で健康食品を開発・販売を始め、経営の新しい柱に育て上げつつある。
中山氏の挨拶はガッチリした体つきにふさわしく声量十分、表情も自信に満ちていて、かつ論旨明快。当初はざわざわしていた会場も次第に静かになり、席に着いている会員の胸に中山氏の言葉がある種の感動と確信をともなって深く染み通っていくように感じられた。
それもまた当然であろう。この会場に集まった同友会会員の多くが、これまでたびたび取り上げてきた同友会の「三つの目的」や「自主・民主・連帯」の精神を十分に理解し、「社員はパートナー」と捉える「労使見解」をも自らのうちにしっかり収め、自社の経営指針づくりに生かしてきた同友会運動のコアメンバーといっていい人たちだからである。
残る人たちにしても、この会で同友会運動の神髄を学び取り、自らの経営に生かし、次代のコアメンバーたらんとする意欲十分の人たちである。でなければ、忙しい時間を割いて、東北仙台まで自費でやってくるはずはない。
■政治団体や組合に似て非なるもの
それだけに、集まった会員たちは「連帯」を謳う組織だけに、単なる仲間と言うよりともに同友会運動を担ってきた、あるいは担っていこうとする強い精神的紐帯を有する同志だと言ってよい。経営指針成文化と実践運動で丁々発止と真剣勝負を戦ってきた仲であれば、なおさらである。
さらに言えば、やずやの矢頭宣男氏がそうであったように、各地の同友会で実績を上げた経営者は都道府県境を超えて各地に呼ばれ、自らの経営と同友会精神、あるいは同友会運動の関わりや意味について講演することが少なくない。会内では「会員講師」と呼ぶが、そうした学び合う関係もあり、同友会会員の交友は全国的であり、総会はその人たちの会社づくりの妥当性を確かめ合う機会ともなっているのである。