身の回りで「値上げ」が相次ぐなか、公的年金の支給額は下がっています。年金生活者の生活はますます厳しくなります。さらにアフターコロナに待ち受ける4つの危機が迫っているといいいます。どう対処したらいいのでしょうか。24,000戸以上を管理する不動産会社の代表の重吉勉氏が著書『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)で明らかにします。

奥さんに内緒です…「月5万円マイナス」の不動産投資の悪夢

アフターコロナに待ち受ける4つの危機

わたしがこれだけ収入源をつくることを強くおすすめしているのは、『年金減』『増税』『定年延長』『長寿化』とい4つの危機が迫っているからです。

 

■年金が増えても実質減 厳しさを増す公的年金制度

 

年金制度は数年ごとに大きな改正が繰り返され、制度が維持できるように整えられています。一方で、一個人にとってみれば受給額が実質的に減少するしくみが導入されることもあります。

 

例えば「マクロ経済スライド」です。マクロ経済スライドとは、年金制度の維持を目的として、年金額の伸び率を賃金上昇率や物価上昇率より 低く抑える仕組みです。従来の年金受給額の決定方法では、物価や賃金の上昇に併せて、年金も上昇していました。例えば、物価が2%上昇すれば、同じように年金も2%増加していたのです。

 

しかし、マクロ経済スライド導入後は、たとえ物価が2%上昇していたとしても、年金の上昇率は2%未満に抑えられてしまうのです。実際に、2015年度、2019年度、2020年度の年金額改定において、マクロ経済スライドは発動しています。

 

実際に2020年度の年金増加率を見ていきましょう。前年の物価上昇率は0.5%、過去3年間における名目の賃金変動率は0.3%です 従来であれば、このうち低い方が年金の伸び率に反映されていたので、賃金変動率の0.3%が採用され、年金も0.3%分だけ増えるずでした。しかし、これがマクロ経済スライドの導入によって、年金の増加率は0.2%に抑えられたのです。

 

この1年だけで見れば、わずか0.1%の減少と感じるかもしれませんが、景気が回復して物価や賃金の上昇が続けば続くほど、この差は開いていくことになります。実際に使えるお金は目減りしてしまうことはあれど、増えることはないのです。

 

これは大変な問題です。現在、日銀はコロナ禍の経済を下支えするために、過去に例がないほどの金融緩和を行っています。黒田日銀総裁は物価上昇率2%になるまで金融緩和の手を休めることはないと明言していますし、2013年の安倍政権発足以降、この政策は継続されてきました。

 

つまり、将来のインフレを起こしますとはっきりと言っているのです。それにもかかわらず、年金はインフレには対応しきれていません。実質的には目減りしていくのです。これでは生活は苦しくなる一方です。

 

■現役世代が減少する分を補うには増税しかない

 

日本の人口、特に年金制度を支える現役世代の人口はどんどん減りつつあります。高齢社会白書によれば、現状でも2人の現役世代で1人の高齢世代を支えている状態ですが、約30年後には現役世代1人で高齢世代1人を支える時代がやってきます。

 

加えて、基礎年金の財源も先行き不安です。基礎年金の給付額のうち、半分は現役世代により納付された年金、半分は国庫負担となっています。国庫というと聞こえがよいですが、政府が負担するのではなく、結局は国民から集めた税金で補填をしているのです。一定の支給額を維持していくためには、さまざまな形での増税は避けられない未来ともいえます。

 

増税といっても、消費税が8%から10%になる、といったわかりやすい増税だけではありません。これまでもあの手この手で、実質的な増税は行われてきているのです。例えば2020年から給与収入が850万円超の会社員は給与所得控除額の額が引き下げになりました。所得控除の減少は、課税対象となる所得の増加を意味しますので、これも増税の1つです。

 

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本連載は重吉勉氏の著書『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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