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なぜ人は忠告を無視してしまうのか
ここからは売却理由を細かく見ていきましょう。最近、問い合わせで激増しているのが損切りです。
損切りには3種類のケースがあります。
1つめは、悪質な不動産会社やコンサルタントに明らかに騙された人です。
具体的には、新築の区分マンションを買ったり、多法人スキームで買ったり、何も分からないまま業者の言われるままに赤字物件を買ったりした人です。
無知ゆえに、自分が不動産投資に失敗していることすら気づいていないケースもあります。中には収支がマイナスであっても、「将来のための資産」という言い訳を鵜呑みにしています。
破綻した新築シェアハウス「かぼちゃの馬車」も同様で、もともと無理のある方法だったにも関わらず、家賃保証がされている状況では、多くの投資家さんがその危うさに気づいていませんでした。家賃保証がストップ、運営会社が破綻して、はじめて失敗に気づいたケースがほとんどです。
例えば、あるサラリーマン投資家さんは、満室になっても収支がプラスにならない新築区分マンションを与信ギリギリまで買っていました。
大家になってしばらく経ってから、同じサラリーマンをしながら不動産投資をする友達ができたときに「あなたの投資は失敗だからやめたほうがいい。すぐ売るべきだ」と言われたそうです。
こうしたアドバイスは余計なお世話の場合もありますし、正しい場合もありますが、このケースでは後者でした。つまり、放置していたら明らかに赤字が積み重なり損をしてしまいます。
しかし、この投資家さんは区分マンションの営業マンを信じ切っており、半年間は聞く耳を持たなかったそうです。おそらく、それはお金を注ぎ込んでいて認めたくないからでしょう。特に「高属性」と言われるサラリーマンの方は、失敗を認めたくない気持ちが強いようです。
それでも、いろいろ話を聞いていくうちに、自分が間違っていたことに気づき、売却に踏み切りました。損切りになってしまったものの、おかげで新しい投資ができるようになりました。
このように失敗しても損切りをすれば復活できるのに、大半の人は損切りができません。たしかに、自分が損したことを認めたくない気持ちもわかります。
また、奥さんに秘密で買っている人も多くいます。特に区分を買う人は節税の恩恵を受けたい人もいますが、大きく儲けることではなく、月5万円程度のお小遣いを得たいというモチベーションで始めています。そうした状況だと、仮に5万円マイナスになったとしても、致命的なダメージはありません。
しかし、そうした状況を完済までの数十年間、続けるつもりなのでしょうか。
売ったら気持ちが一気に楽になれますし、損切りといっても200万円、300万円程度なので復活もできます。
それでも損切りができないのは、「売ったほうがいい」「売れば借金がゼロになるから物件が買いやすくなる」と大よその理解はしつつも、数百万円も払っておきながら損を確定することを認めたくないのでしょう。