(※写真はイメージです/PIXTA)

失業率が変化しない程度の成長率を表す指標「潜在成長率」。経済成長率がゼロだと失業者が増えるということは、潜在成長率はプラスなのです。そして、先進国の潜在成長率は低く、新興国は高い傾向にあります。政府日銀も、春の日差しのように穏やかで心地よい成長率を維持すべく、日々心を砕いて政策を打ち出しています。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

「少子高齢化」も、日本の潜在成長率低下の原因に

以上は一般論ですが、日本の事情として、少子高齢化が進んでいることも潜在成長率を引き下げる要因となっています。

 

ひとつには、当然ですが、現役世代の人数が減るわけですから、労働生産性がよほど向上しないと潜在成長率はマイナスになりかねないわけです。

 

もうひとつ、高齢者の需要は医療や介護といった労働集約的なものが多い、ということです。女性が豊かになると洋服から美容院に需要が移り、彼らが歳をとると洋服から介護に需要が移る、というイメージでしょうか。

長引く不況による「労働生産性向上率の低下」も要因に

さらにひとつ、日本の事情として「長期不況が潜在成長率を押し下げた」ということもいえそうです。不況期には、労働力が余っていてアルバイトが安く雇えますから、飲食店は自動食器洗い機を買いません。アルバイトに手作業で食器を洗わせたほうが安いからです。そうなると、アルバイトの労働生産性は上がりません。

 

景気がいい国では、労働力不足となるので飲食店が自動食器洗い機を導入し、アルバイトの労働生産性が上がっているのと比べると、日本経済の労働生産性向上率は低くなるのです。

 

労働生産性が上がらないと、少し成長しただけで失業率が下がることになります。つまり潜在成長率は低くなる、というわけですね。

 

アベノミクスで景気が回復し、労働力不足になりました。経済成長率はそれほど高くなかったのに労働力不足になったのは、自動食器洗い機を導入するという発想が、バブル崩壊後の長期低迷期に、経営者の頭から消えてしまったからなのかもしれませんね。

 

今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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