(画像はイメージです/PIXTA)

母親亡きあと、実家で父親と20年の同居生活を送った長男家族。父が亡くなった際、妹は「都心部の便利な実家に同居していたのだから、相当な金額分の家賃分を得しているはず。相続財産から引くべき」と言い張り、譲りません。妹の主張は正しいのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

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資産家の父が逝去、兄妹は遺産を2分割する予定だが…

太一さんは、貸しマンションを1棟(2億円相当)を保有するほか、世田谷区の駅近に自宅として住んでいる戸建て(1億円相当)も持っています。

 

太一さんの妻陽子さんが先に亡くなってしまったことから、長男の太郎さんは、太一さんの面倒を見るため、太一さんの自宅に、太郎さんの妻月子さんと娘の星子ちゃんと一緒に住んでいました。

 

太一さんと太郎さんが一緒に住むようになって20年が経過し、太一さんが80才となったときに、太一さんは肺炎にかかり亡くなりました。亡くなったときには、貸しマンションと自宅の他に、預貯金、株式などで1億円ありました。遺産の合計は4億円となります。

 

太一さんには、太郎さんの他に長女の花子さんがいます。

 

遺言がなかったので、太一さんも花子さんも、遺産は法定相続分の2分の1ずつ分けることになると理解しています。しかし花子さんは、通勤・通学にも便利な世田谷区の駅から徒歩圏の太一さんの自宅に、家賃も支払わずに20年も住んでいた太郎さんと、賃貸マンションに住み、夫と一緒に家賃を支払ってきた自分が、2分の1ずつ平等に分けることに納得がいきません。

 

世田谷区の自宅に住むとしたら、家賃は少なくとも30万円は下らないことから、20年分の家賃である7200万円は特別受益として太郎さんの相続分から引いてもらいたいと思っています。

 

さて、このような場合、太一さんと花子さんはどのように遺産を分けたら良いのでしょうか。

 

①太郎さんが家賃を支払わずに太一さんの自宅に住んでいたことは特別受益にあたり、20年分の家賃相当額である7200万円は遺産に加算して、 4億7200万円となる。花子さんと太郎さんは、2億3600万円ずつ分けることとなるが、太郎さんは既に7200万円を受け取っていることから、4億円の遺産から太郎さんは1億6400万円を、花子さんは2億3600万円を相続することとなる。

 

②太郎さんが家賃を支払わずに太一さんの自宅に住んでいたことは特別受益に当たらないから、4億円の遺産を2億円ずつ分けることとなる。

 

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