(画像はイメージです/PIXTA)

ある高齢女性は、資産家の夫から相続した財産を、夫の甥に「伯母さんが死んだらあげる」と、ことあるごとにいっていました。女性の実子である娘2人はまともに取りあいませんでしたが、女性の葬儀後、甥から「口頭での遺贈は有効」と主張され、困惑します。実際はどうなのでしょうか。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

自分の娘がいるのに、甥へ「不動産をあげる」と…

佐藤陽子さんは、夫の佐藤太一さんから相続した世田谷の自宅(1.5億円相当)に住んでおり、賃貸マンション(7,000万円相当)の賃料収入と年金で暮らしています。預貯金等金融資産は3,000万円くらいあります。子どもに長女の百合子さん、次女の菊子さんがいますが、2人とも結婚して、それぞれの夫と子どもと暮らしており、陽子さんとは別居しています。

 

陽子さんは、自分に男の子がいないことから、近所に住む太一さんの弟である健二さんの子ども(甥っ子)の智さんをかわいがっていました。

 

そして、陽子さんは、ことあるごとに「伯父さんと伯母さんには女の子しかいないから、うちの自宅とマンションは、佐藤の名前を継ぐ智ちゃんにあげる」といっていました。

 

そして、夫の太一さんが亡くなってからも、陽子さんは「私が死んだら、智ちゃんに自宅と、マンションをあげる」といっていました。

 

そんな陽子さんが亡くなり、四十九日が過ぎて、百合子さんと菊子さんは、残された遺産をどう分けようか話し合っていたところ、突然智さんから「伯母さん(陽子さん)が『死んだら(僕に)自宅とマンションをあげる』といっていたのは、百合子さんも菊子さんも知っているでしょう? だから、自宅とマンションは僕のものだよ!」といってきたのです。

 

これに対し、百合子さんと菊子さんは、「確かに母はそういっていたけど、口頭の遺言は無効でしょ?」と反論しました。

 

すると智さんは「〈口頭の遺言〉は無効でも、〈口頭の贈与〉は有効だから、やはり自宅とマンションは僕のものだよ」といってきたのです。

 

百合子さんと菊子さんは、智さんに自宅とマンションを取られてしまうのでしょうか。

 

①口頭の遺言は無効だから、百合子さんと菊子さんは何もしなくても自宅とマンションを智さんに取られることはない。

 

②口頭の贈与は有効だから、自宅とマンションを智さんに取られてしまう。

 

③口頭の贈与は証明できれば有効だけれども、履行がなされていない場合は解除することが可能だから、百合子さんと菊子さんは口頭の贈与を解除することにより、自宅とマンションを智さんに取られることはない。

 

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